看護師必見!ファーストレベルの修了でレベルアップをはかろう

看護師として働いている方の中には、看護管理をし始めた方や看護管理に興味のある方も多いでしょう。認定看護管理者には「ファーストレベル」「セカンドレベル」「サードレベル」の3つがあります。今回は、認定看護管理者の一番はじめのレベルである「ファーストレベル」について、解説していきます。

認定看護管理者の制度の目的やファーストレベルの取得方法などについて、解説しているので、看護師としてのスキルアップのための参考にしてみてください。

1.ファーストレベルとは

ファーストレベルは、看護管理の基本的な部分を学ぶ課程です。管理職になったばかりの方や看護管理に興味のある方におすすめの課程となります。看護主任クラスの看護師の方は、受講しておくと現場で役に立つでしょう。

また、認定看護管理者の資格を取得する際に必要になる方もいるので、認定看護管理者を目指している人も早めにファーストレベルの受講をすることをおすすめします。

2.ファーストレベルを受講するメリット

ファーストレベルを受講するメリットとしては、以下のようなものがあります。

2-1 文章を書くのが得意になる

ファーストレベルでは、教科目ごとにレポートを書くため、文章を書くことが多くなります。日ごろ、記録などの記載はしていますが、その他で文章を書くことは少ない方も多いでしょう。

ファーストレベルのレポートには、評価基準があります。この評価基準にそったレポートが書けているかが大切です。そして、同時に分かりやすい文章を書くということが必要になります。評価基準にそった内容が書かれていても、分かりにくい文章では評価が低くなってしまうことも考えられるので、分かりやすく書く文章力が必要になってきます。

レポートを書く際に分かりやすい文章を日々書こうと努力していくことで、文章を書くのが上手になり、文章を書くのが得意になってくるでしょう。

2-2 他の病院や施設で抱えているリアルな悩みを知ることができる

ファーストレベルでは、さまざまな病院や施設の管理者や管理者を目指している人、看護管理に興味のある人が受講します。すると、受講中やそれ以外の場で、管理で悩んでいることの話をすることが多いでしょう。

そんなときに「そんな悩みがあるんだ」「同じような悩みをみんな抱えているんだな」など、他の病院や施設のリアルな悩みを知ることができます。

2-3 受講後も連絡の取り合える管理者仲間ができる

管理者は孤独な存在になることが多いです。管理していく上で、スタッフに厳しいことを言わなくてはいけないこともあり、孤独になっていく管理者も多いです。そんな孤独な環境になっても、ファーストレベルで一緒に受講した仲間と連絡を取り合うことで、そんな孤独な状況も乗り越えていけるでしょう。

2-4 「問題を解決するための行動」への思考を身につけられる

ファーストレベルを受講し始めると「問題に対してのとるべき行動」について、常に考えながら受講します。すると、何か問題が起きたときにその問題に対して、どのような行動をすれば解決できるか考えることが習慣になります。そして、現場での日々の業務や仕事以外で問題が起きたときにも解決策を瞬時に考えることができるようになるでしょう。

3.ファーストレベルの教育目的

青空の下で立つ看護師

ファーストレベルの教育目的としては、以下のように示されています。

『看護専門職として必要な管理に関する基本的知識・技術・態度を習得する。』

このことから分かるように、ファーストレベルは認定看護管理者の中でも、管理者としての基本を身につけるものだということが分かります。

4.ファーストレベル取得への道

ではファーストレベルは、どのような過程で取得していくのでしょうか。以下にファーストレベル受講の課程についてまとめました。

【ファーストレベル取得の過程】

  1. 看護師免許取得
  2. 実務経験が通算5年以上
  3. ファーストレベルの教育機関課程で受講

4-1 ファーストレベルの受講要件

ファーストレベルを受講できる人の要件は以下のようになります。

  1. 日本国の看護師免許を有する者。
  2. 看護師免許を取得後、実務経験が通算5年以上ある者。
  3. 管理業務に関心がある者。

看護師は経験年数を重ねると、管理者の視点が必要になってくることが多くあります。管理者になるつもりがなかったとしても、管理者に推薦されることも考えられます。したがって、少しでも管理者に興味のある方やそうでない方でも取得しておくと、受講して得た知識を活かせるときがいずれくるでしょう。

4-2 ファーストレベルの教育内容及び時間数

ファーストレベルでは、どのような内容を学ぶのか気になるところです。以下、ファーストレベルで学ぶ内容と時間数になります。

教科目時間数
ヘルスケアシステム論Ⅰ15時間
組織管理論Ⅰ15時間
人材管理Ⅰ30時間
資源管理Ⅰ15時間
質管理Ⅰ15時間
総合演習Ⅰ15時間
合計105時間


ヘルスケアシステム論Ⅰ

単元教育内容
社会保障制度概論・社会保障制度の体系
・社会保障の関連法規
保健医療福祉サービスの提供体制・保健医療福祉制度の体系 
 地域包括ケアシステム
 地域共生社会
ヘルスケアサービスにおける看護の役割・看看連携
・地域連携における看護職の役割
・保健医療福祉関連職種の理解
・看護の社会的責務と業務基準
 看護関連法規
 倫理綱領
 看護業務基準


組織管理論Ⅰ

単元教育内容
組織マネジメント概論・組織マネジメントに関する基礎知識
・看護管理の基礎知識
看護実践における倫理・看護実践における倫理的課題
・倫理的意思決定への支援


人材管理Ⅰ

単元教育内容
労務管理の基礎知識・労働法規 
・就業規則
・健康管理(メンタルヘルスを含む)
・雇用形態
 ・勤務体制 
・ワークライフバランス 
・ハラスメント防止 
看護チームのマネジメント・チームマネジメント
・看護ケア提供方式
・リーダーシップとメンバーシップ
・コミュニケーション
・ファシリテーション
・准看護師への指示と業務
・看護補助者の活用
人材育成の基礎知識・成人学習の原理
・役割理論
・動機づけ理論
・人材育成の方法


資源管理Ⅰ

単元教育内容
経営資源と管理の基礎知識・診療
・介護報酬制度の理解
・経営指標の理解
・看護活動の経済的効果
看護実践における情報管理 ・医療
・看護情報の種類と特徴
・情報管理における倫理的課題(情報リテラ シー) 


質管理Ⅰ

単元教育内容
看護サービスの質管理・サービスの基本概念
・看護サービスの質評価と改善
・看護サービスの安全管理
・看護サービスと記録


総合演習Ⅰ

単元教育内容
演習・学習内容を踏まえ、
 受講者が取り組む課題を明確にし、対応策を立案する。

4-3 ファーストレベルが学べる教育機関

今回は、関東でファーストレベルが学べる教育機関についてご紹介していきます。その他の地域の方や定員数などは、認定看護管理者教育機関別の開講状況・定員数一覧(2021年度開講課程)を参考にしてください。

【茨城県】
・茨城県看護協会
・茨城県立中央病院 認定看護管理者教育課程

【栃木県】
・栃木県看護協会

【群馬県】
・群馬県看護協会

【埼玉県】
・埼玉県看護協会
・上尾中央医科グループ協議会
・埼玉医科大学 認定看護管理者教育課程

【千葉県】
・千葉県看護協会

【東京都】
・東京都看護協会
・国際医療福祉大学看護生涯学習センター
・聖路加国際大学教育センター
・日本赤十字社幹部看護師研修センター
・東京都福祉保健財団
・昭和大学看護 キャリア開発・研究センター
・東京慈恵会医科大学 教育センター 看護キャリアサポート部門
・地域医療機能推進機構本部研修センター 

【神奈川県】
・神奈川県看護協会
・神奈川県立保健福祉大学 実践教育センター
・北里大学 看護キャリア開発・研究センター
・イムス医療従事者生涯教育センター 認定看護管理者教育課程 
・神奈川工科大学看護生涯学習センター
・湘南医療大学 看護キャリア開発コアセンター 認定看護管理者教育課程

教育機関は、その年によって変わることがあります。ファーストレベルを受講しようと検討している方は、再度きちんと教育機関について調べるようにしましょう。

4-4 ファーストレベルの修了要件

受講したものの、ファーストレベルに落ちたらどうしようと思う方もいるでしょう。したがって、ファーストレベルを受講するにあたっては、修了要件やレポートの評価基準はどのようになっているのかも気になるところです。
次に、修了要件やレポートの評価基準についても解説していきます。

日本看護協会では、修了要件を以下のように定めています。

認定看護管理者カリキュラム基準に定める全教科目の修得を もって認定看護管理者教育課程の修了とする。教科目の修得と は、以下の各項目を満たした場合をいう。

1)各教科目の所定の時間数の 4/5 以上の出席がある。

2)各教科目で教育機関の定める成績を修めている。

「各教科目での教育機関の定める成績を修めている」は、教育機関で多少基準は変わってくる可能性はありますが、どのような基準で定められているのでしょうか。

日総研で出されている基準について、ご紹介していきます。細かいところなど、研修機関で違う可能性もあるため、あくまでも参考程度に見てください。

【ファーストレベルの評価基準】

項目評価基準
課題の理解論点が課題に対応している
論旨が一貫している
専門用語や概念の解釈が適切である
思考過程事実や経験を概念化することができる
問題意識を持って批判的に考えることができる
先見性を持って変化への対応を考える
理論や概念を事実に適応し分析することができる
多面的な考察を総合して判断できる
今後の課題が主体的に選択できる
論述能力文章が明確で平易である
文章が論理的に構成されている
適切な日本語表現である

ファーストレベルを受講するにあたって、レポートで落ちたという話もよく聞きます。したがって、「レポートで落ちてしまったらどうしよう」と不安になる方もいるでしょう。

しかし、きちんと教育機関の評価基準を理解し、分かりやすい文章を書いていく意識をすれば大丈夫です。そして、そんなレポートの作成でつちかった文章力も今後の看護業務に活かすこともできます。

看護記録とは、また違った文章を書くことになるので、はじめは大変かもしれませんが、そこで臆せず、チャレンジしていきましょう。

4-5 ファーストレベルに落ちない方法

ファーストレベルの修了要件は、出席時間とレポートの評価です。とくに出席時間は、1日でも休んでしまうと満たせなくなってしまう可能性が高いので、日ごろの健康管理と予定管理をきちんとしておきましょう。

とくに気になるのは、レポートの評価です。しかし、これもきちんと受講していてあまりにも支離滅裂な文章でなければ大丈夫です。

検索に「ファーストレベル 落ちた」と出てくると不安になりますが、実際にファーストレベルで落ちたというのを目にしたことはありません。

したがって、出席時間に気を付けてさえいれば、あとは普通に受講してレポートが書ければ、通常は合格できるレベルといえます。

ただし、ときには厳しい先生などもいる可能性があるため、油断せずにしっかりと教育機関の基準を把握し、レポートを書いていくことが大切です。

4-6 ファーストレベル取得のためにかかる費用

ファーストレベルを取得する際にかかる費用は、教育機関によってさまざまですが大体20〜30万円程度と考えておくといいでしょう。

5. 認定看護管理者を目指す

ファーストレベルの受講を検討している方の中には、認定看護管理者を目指している方もいるのではないでしょうか。認定看護管理者についても、最後に解説していきます。

5-1 認定看護管理者の登録者数

認定看護管理者は、何人いるのでしょうか。日本看護協会HPで調べてみると、4468名の登録がありました。

現在、管理者出ない人でも看護管理について知りたいという方が増えており、いちスタッフが認定看護管理者を取得している人もいます。

管理職ではなくても、看護管理について知っておくことで業務をしていく上で、管理の視点でも仕事をしていくことができます。他のスタッフよりもひとつ上の目線で、業務にあたることができるでしょう。

また、看護業務でも認定看護管理者で習得してきたことを応用することができ、看護技術の向上にもつながります。

5-2 認定看護管理者の制度の目的

認定看護管理者制度は、多様なヘルスケアニーズを持つ個人、家族及び地域住民に対して、質の高い組織的看護サービスを提供することを目指し、看護管理者の資質と看護の水準の維持及び向上に寄与することにより、保健医療福祉に貢献します。

とされています。もう少し分かりやすく説明すると、管理者としての質を上げて、現場で働く看護師の技術の維持や向上に向けてアプローチしていき、貢献していくというのが目的です。

看護師長や看護主任、訪問看護ステーションの管理者など、管理職として働いている看護師が管理者の資質を上げるのにおすすめです。しかし、管理職として働いている方だけでなく、今後管理者としてやっていきたい方や看護管理に興味のある方も、ファーストステップは早いうちから勉強しておくといいでしょう。

5-3 認定看護管理者になるには

認定看護管理者になるためには、以下のような要件が必要です。

要件1:認定看護管理者教育課程サードレベルを修了している者。

要件2:看護系大学院において看護管理を専攻し修士号を取得している者で、修士課程修了後の実務経験が3年以上ある者。

要件3:師長以上の職位で管理経験が3年以上ある者で、看護系大学院において看護管理を専攻し修士号を取得している者。

要件4:師長以上の職位で管理経験が3年以上ある者で、大学院において管理に関連する学問領域の修士号を取得している者。

認定看護管理者は、上記の要件を満たしたうえで書類審査と筆記試験による、認定審査を受ける必要があります。

認定看護管理者の合格率は、約70〜80%です。

6.まとめ

今回は、看護師のファーストレベルについて解説してきました。ファーストレベルは、看護管理の基本を学べるものです。看護主任や看護管理に興味のある看護師のレベルアップしたいと思っている方は、受講するといいでしょう。

管理職でない方もファーストレベルを受講することで、看護管理の視点で業務を遂行できたり、問題解決の力が付いたりとさまざまな面でメリットがあります。とくに認定看護管理者の取得を目指している人は、サードレベルまでの修了が必要です。したがって、ファーストレベルは早いうちから受講しておくのがおすすめです。

看護管理に少しでも興味がある方は、ファーストレベルを受講してみてください。

この記事を書いた人

槇田 佳織

神奈川県立衛生短期大学衛生看護科卒業。急性期病棟、慢性期病棟、認知症対応型デイサービスや訪問看護など、いろいろな職場を経験。看護師ライターとして今までの経験を活かし、医療や看護・介護などを中心に執筆している1児の母。今後は小児がんのきょうだい児支援や看護師への支援などについても活動していく予定。

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