看護師として万が一に備えて保険に入ろう!看護師賠償責任保険とは?

いま、看護師でも医療事故で訴訟を起こされる可能性が高い時代となっています。しかし「訴訟なんてめったに起こるものでもないし、看護師賠償責任保険の掛け金にお金をかけるのは無駄なのではないか」と思っている方も多いのではないでしょうか。

実は、看護師賠償責任保険は患者さんとのトラブルだけでなく、業務中に破損させてしまったり、紛失してしまったりした医療機器なども対象になることがあります。

今回は、看護師賠償責任保険の補償の対象が何なのか、どれくらいの賠償限度額が出るのかなど詳細を解説していきます。加入方法の分からない方のために、加入の流れについても解説しているので参考にしてみてください。

1.看護師のための保険である看護師賠償責任保険とは?

悩む看護師

看護職賠償責任保険とは、万が一患者さんに生命や身体に意図的でなくとも、危害を加えそれに対してご本人やご家族から賠償責任を求められた場合に補償してくれる保険です。

看護職賠償責任保険で補償されるのは、対人だけではありません。病院の備品などを壊してしまった際や紛失してしまった際の補償をしてくれます。

病院で加入していることが多いですが、個人まで補償してくれるとは限らないため、看護師として働く際には、加入しておきましょう。

看護師賠償責任保険で補償される内容としては、以下のようなものがあります。

対人賠償       対人賠償は、患者さんに危害を与えてしまい、
賠償責任を求められたときに賠償してくれるものです。
対物賠償対物賠償は、病院などで使っている備品を壊してしまったり、
紛失してしまったときに、修理費や再購入費を賠償してくれるものです。
人格権侵害人格権侵害とは、
患者さんへのプライバシー侵害や個人情報の漏洩、
人権侵害などで賠償を求められたときに対応してくれます。

2.看護師賠償責任保険に加入している割合

看護師賠償責任保険に加入している人の割合は、以下のようになります。

看護協会の看護師賠償責任保険に加入している人34.50%
看護協会以外の看護師賠償責任保険に加入している人19.50%
過去に加入していたが今はしていない人24.00%
今まで一度も加入したことがない人21.00%
その他1.00%

この調査では45%もの人が、看護師賠償責任保険の加入をしていないことになります。
では加入している人、加入していない人はそれぞれどのような思いでいるのでしょうか。
それぞれの意見について、次にまとめたので参考にしてみてください。

3.加入している人、していない人の意見

【加入している人】
・職場の人みんな入っているから
・病院で強制的に加入させられた
・人員不足で、忙しくインシデントが続いたため危機感を覚えた
・看護師が訴訟されることが多くなってきている時代。自分の身は自分で守れるようにするために加入した。
・職場では、守ってくれないと思ったから。

【加入していない人】
・転職時に切れてしまい、そのままになってしまった。
・賠償のときの保険があるというのを知らなかった。
・必要と思いながらも、手続きがめんどくさいから。
・加入の方法が分からない
・加入するメリットが分からない
・医療行為がない職場のため加入していない。

加入していない人の中には、保険があること自体知らないという方もいました。また、必要性は感じているけれども、加入の方法が分からなかったり、加入する手続きが面倒で加入していないという方も多いです。

4.看護師賠償責任保険に加入するべき理由

提案する看護師

現在看護師の専門性が高くなり、以前よりも責任が問われる時代になってきました。そのため、看護師個人のミスが訴訟の対象となるケースが増えてきています。したがって、看護師が自らの身を守るためにも、看護師として働くのであれば看護職賠償責任保険に加入しておきましょう。

でも、病院で加入してるから個人で入る必要はあるの?と思う方もいるでしょう。
病院で加入している賠償責任保険は、個人に対しての訴訟は対象外という場合も多いです。
したがって、個人で加入する看護職賠償責任保険への加入がないと万が一のときの対応が難しくなってしまう可能性が高くなります。
また、看護師賠償責任保険の賠償保障は、前述したように対人だけではありません。病院の備品についても、賠償してくれるので安心です。
看護師も人ですので、どんなに注意をしていても間違いを起こすことはあります。したがって、万が一の備えをしておくことに越したことはありません。

5.看護師賠償責任保険が支払われるケースと支払われないケース

看護師賠償責任保険では、対人賠償や対物賠償で支払われるケースと支払われないケースがあります。

それぞれのケースについて、ご紹介していきます。

【支払われるケース】

  1. 険師助産師看護師法の規定に基づき、保健師・助産師・看護師・准看護師が行う業務(※災害保険などによる看護業務)(※有資格者が業務上のスキルアップを目的として参加する研修・臨床実習等を含む)
  2. 助産師・看護師が行う保険教育業務・健康保険業務
  3. 准看護師が医師又は看護師の指示を受けて行う保険教育業務・健康教育業務
  4. 1・2・3に対する管理監督業務
  5. 対象となるすべての業務に対して、報酬の有無は問わない

【支払われないケース】

  1. 保険師助産師看護師法の規定に違反して行った看護業務に起因する賠償責任
  2. 故意に起こした事故による賠償責任
  3. 業務の結果を保証することにより加重された賠償責任
  4. 被保険者と他人との間に損害賠償に関する特別の約定がある場合において、その約定によって加重された賠償責任
  5. 海外での看護行為
  6. 美容を唯一の目的とする医療行為等に関連する業務に起因する賠償責任
  7. 被保険者と同居する親族に対する賠償責任
  8. 被保険者の使用人が、被保険者の業務に従事中に被った身体の障害に起因する賠償責任
  9. 戦争(宣戦の有無を問いません)、変乱、暴動、そうじょう、労働争議に起因する賠償責任
  10. 地震、噴火、洪水、津波等の天災に起因する賠償責任
  11. 被保険者が業務を行う施設もしくは設備(業務遂行中に直接使用しているものを除きます)または自動車、航空機、昇降機、車両(原動力がもっぱら人力であるものを除きます)、船舶もしくは動物の所有、使用もしくは管理に起因する賠償責任
  12. 対物賠償の場合で他人の財物を紛失した場合 など

6.看護師賠償責任保険の選び方

看護師賠償責任保険は、いくつかあります。しかし、どの保険に加入すればいいのか迷いますよね。選び方のコツについてお伝えしていきます。

6-1 賠償限度額で決める

賠償内容については、ほとんど変わりありませんが会社などによって賠償限度額が違います。

後ほど、詳細は解説しますが日本看護協会とWillnext(ウィルネクスト)Bプランの対人賠償で賠償限度額を比較してみます。

・日本看護協会の対人賠償:5,000万円
・ウィルネクストBプラン:1億円

大体の看護師賠償保険の対人賠償の限度額は、5,000万円もしくは1億円ですが自分の勤めているところの患者層で賠償限度額を決めて、加入するといいでしょう。

例えば、富裕層の方の看護を行う場合は、多少掛金が高くても賠償限度額の高いものを選ぶなど、職場の状況などに応じて決めていくのがおすすめです。

6-2 掛け金で決める

看護師なりたての頃は、看護師とはいえお給料が入るまでは高い掛金はなかなか掛けられません。自分の働くところではもしかしたら賠償額が足りないかも、と思う方もいるかもしれませんが、賠償保障があるのとないのとでは、安心感は違います。したがって、万が一のことを考えて、賠償額が安いものでも加入しておくことをおすすめします。

また、看護師賠償責任保険は1年間の契約になります。自動更新ではないため、毎年更新手続きが必要となってきます。したがって、はじめは安い掛金のところのものに加入し、1年経ち少し余裕が出てきたら、自分にあった看護師賠償責任保険に加入しなおすといった方法をとってもいいでしょう。

7.看護師におすすめの看護師賠償責任保険4つ

看護師におすすめの看護師賠償責任保険を4つご紹介していきます。看護師賠償責任保険の加入をご検討の方は、参考にしてみてください。

7-1 日本看護協会「看護職賠償責任保険制度」

日本看護協会の「看護職賠償保険制度」は、日本看護協会の会員の方が加入することができます。

主な取引先の保険会社は以下になります。

・東京海上日動火災保険株式会社
・三井住友海上火災保険株式会社
・損害保険ジャパン株式会社

金額
掛け金2,650円/年
対人賠償5,000万円/1事故
人格権侵害5,000万円/1事故
対物賠償100万円/1事故
傷害死亡・後遺障害保険金66.3~85万円
初期対応費用500万円
血液曝露等傷害保険金HBV:1.8万円/HCV:18万円/HIV:60万円

日本看護協会の「看護職賠償保険制度」は、上記だけでなくセクハラやパワハラの法律相談費用も補償の対象となっているため、安心です。

7-2 Willnext(ウィルネクスト)の「看護職向け賠償責任保険」

Willnext(ウィルネクスト)の「看護職向け賠償責任保険」は、日本看護学校共済会の加入者であればだれでも加入できます。

日本看護滑降共済会といったら、看護学校勤務でないと加入できないと思う方もいるでしょう。しかしこの保険は、看護学生や病院勤務の看護師も加入することが可能です。

Willnext(ウィルネクスト)の「看護職向け賠償責任保険」には、「Aプラン」と「Bプラン」があります。
それぞれの掛け金と賠償限度額は以下のようになります。


【Aプラン】

金額
掛け金2,980円/年
対人事故(基本契約)1事故:5,000万円/保険期間中:1億5000万円(免責金額なし)
対物事故1事故・保険期間中:50万円(免責金額なし)
人格権侵害基本契約に同じ
(支払限度額については、対人事故(基本契約)と共有にとなります。)
初期対応費用1事故:250万円 (免責金額なし)
(うち、対人事故発生時の見舞費用は1被害者あたり5万円限度)
感染見舞金制度入院・通院・待機期間の日数に応じて1万円~10万円


【Bプラン】

金額
掛け金3,440円/年
対人事故1事故:1億円/保険期間中:3億円(免責金額なし)
対物事故1事故・保険期間中:100万円(免責金額なし)
人格権侵害基本契約に同じ
(支払限度額については、対人事故(基本契約)と共有にとなります。)
初期対応費用1事故:250万円 (免責金額なし)
(うち、対人事故発生時の見舞費用は1被害者あたり5万円限度)
感染見舞金制度入院・通院・待機期間の日数に応じて1万円~10万円

感染見舞金制度は、針刺し事故はもちろんのこと、新型コロナウイルスやインフルエンザ、流行性角結膜炎などの感染症も支払いの対象となります。

また、プランが2つあるので自分に合った賠償保障額を選んで加入できるのが、いいところです。

7-3 メディカル保険サービス

メディカル保険サービスの掛け金は他のところよりも高いです。しかし、支払限度額も充実しているため、富裕層の方の対応が多い看護師にとっては、安心したものになります。

金額
掛け金5,640円/年
基本契約1事故:1億円/保険期間中:3億円
人格権侵害担保特約条項1事故:基本契約と同額(共有)
財物損壊担保特約条項1事故:1億円/保険期間中:1億円
訴訟対応費用担保特約条項1事故:1,000万円
初期対応費用担保特約条項1事故:500万円/うち見舞費用(1名):10万円

7-4 大学病院・看護師派遣会社「看護職賠償責任保険」

この他に大学病院や看護師派遣会社などでも提供している「看護職賠償責任保険」が数多くあります。保険加入が可能かどうか調べてみるのもいいでしょう。

8.看護師賠償責任保険の加入方法

見学する看護師

看護師賠償責任保険に加入していない方の中には、加入の方法が分からず加入していないという人もいました。今回は、加入の方法についてもいくつかご紹介していきます。

看護師賠償責任保険は、自動更新はされないため1年で自分で更新手続きをしなくてはいけません。そういえば、看護師賠償責任保険に加入してから、1年以上経過しているという方も、これを参考に再度加入手続きをしましょう。

8-1 日本看護協会の場合

日本看護協会の「看護職賠償責任保険」は、日本看護協会の会員でないと加入できません。したがって、保険の加入を検討している場合は、まず日本看護協会の会員になりましょう。

その後、以下の手順で看護師賠償責任保険に加入することができます。

  1. 電話もしくはインターネットで看護師賠償責任保険加入の郵便振替用紙を請求する
  2. 郵便振替用紙に必要事項を記入し、郵便局にて手続きを行う
  3. 振替払込請求書兼受領書の保管(受領書が加入の証となるので、捨てないように注意してください)

日本看護協会の看護師賠償責任保険は、会員にならないと入れないため、日本看護協会の会員になりたいけれども、看護師賠償責任保険に入りたいという方は、別のものを検討していく必要があります。

8-2 Willnext(ウィルネクスト)の場合

Willnext(ウィルネクスト)の看護師賠償責任保険の加入条件としては、日本看護学校協議会共済会の会員であることが必要です。会員以外の方は加入できないため、注意しましょう。

以下、手続きの方法になります。

  1. 資料請求(インターネットで可能)
  2. パンフレットが送られてくる(書類一式も郵送にて送られてくる)
  3. 入会申込書兼加入依頼書と口座振替依頼書の記入し返信用封筒で返送
  4. 会員証と加入者証が送られてくる

その他「株式会社イースウェル」や「株式会社エージェント」「メディカル保険サービス」などさまざまな看護師賠償責任保険があります。

看護協会や日本看護学校協議会共済会の会員でない方は、ほかの看護師賠償責任保険の加入を検討してみましょう。

9.まとめ

今回は、看護師賠償責任保険について解説してきました。最近は、看護師の専門性が問われてきており、少しのミスでも訴訟を起こされる可能性は秘めています。

したがって、看護師をしていく上で心配を少しでも取り除くために、万が一のときに備えて保険に入っておくことは必要です。

とくに、看護師として働いているうえで患者さんへの対人事故への備えももちろんですが、高額な医療機器などの破損や紛失などの備えもしておくことが大切でしょう。看護師は患者さんに対しても、医療機器の扱いについても同じように丁寧に扱うのが基本です。しかし、看護師も人間です。間違いは起こります。

患者さんは健康や命に関わりますし、看護師同士のダブルチェックもあるため未然に防げることが多いです。それよりも、もしかしたら医療機器の破損や紛失の方が起こりやすいかもしれません。

看護師賠償責任保険は医療保険などと比べて、ほとんど使うことのない保険ですが、万が一訴訟や高額な医療機器の破損を招いてしまったときのことを考えて、加入しておくことをおすすめします。

この記事を書いた人

槇田 佳織

神奈川県立衛生短期大学衛生看護科卒業。急性期病棟、慢性期病棟、認知症対応型デイサービスや訪問看護など、いろいろな職場を経験。看護師ライターとして今までの経験を活かし、医療や看護・介護などを中心に執筆している1児の母。今後は小児がんのきょうだい児支援や看護師への支援などについても活動していく予定。

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