看護師の仕事はプライベートとの両立が大変ですね。不規則勤務ですし、休日が勉強やカンファレンスで潰れることもあります。仕事で精一杯な毎日がいつまで続くのか、また結婚や出産などのライフイベントを、このまま仕事をしながら乗り越えていけるのか不安に思う人もいるでしょう。もしかしたら、どこかで「看護師は離婚率が高い」という噂を聞いて心配に思っている人もいるかもしれません。
看護師の仕事を続けたままでは、家庭との両立は難しいのかというと決してそんなことはありません。家庭の為に看護師の仕事を手放す必要はありませんよ。忙しく大変な仕事でも、両立させるための工夫ができます。使えるものは利用して、両立を叶えてくださいね。
看護師は離婚率が高いって本当?
看護師の離婚率調査
看護師は離婚しやすいという認識が社会の中にはあると思うのですが、実際公の機関が出している調査で実証できるデータはありませんでした(2022.4現在)。ですが、民間の会社が行なったアンケート調査(2017)では参考になるものがありましたよ。
看護師の方に「看護師の離婚率は高いと思いますか?」と聞いたところ、「看護師の離婚率は高いと思う 73.6%」が一番多い回答結果となり、続いて「離婚率は一般的 23.6%」となりました。実に7割以上の方が離婚率が高いと思うと回答した結果となりました。
出典:HATARAKI NURSE 看護師の離婚率は高い?アンケート調査
離婚率が高い原因
その原因としては「離婚しても経済力があるため 47.6%」「予定や時間のすれ違いが多いから 28.0%」が多く挙げられました。
結婚生活の中で一度くらいは離婚を考える機会もあるでしょう。しかし、離婚後の生活を考えると収入面が不安で踏み切れない、といった場合もあると思います。その点看護師は経済面の不安は少ないと言えます。
2021年の日本看護協会看護職員実態調査によると、看護師の平均税込年収は約461万円です。迷った時、経済的に自立できるとすれば離婚に踏み出しやすくなります。
平均基本 給額(円) | 平均税込 給与総額(円) | 平均通算 経験年数(年) | 平均勤続 年数(年) | 平均年齢(歳) | 回答者数 | |
全体 | 279,326 | 384,546 | 17.7 | 10.9 | 41.1 | 4,220 |
保健師 | 311,384 | 392,244 | 19.6 | 13.3 | 43.1 | 101 |
助産師 | 277,131 | 403,821 | 14.3 | 9.5 | 37.5 | 128 |
看護師 | 277,788 | 384,745 | 17.5 | 11.0 | 40.7 | 3,749 |
准看護師 | 218,532 | 303,410 | 18.9 | 11.2 | 47.9 | 78 |
看護職員 | 332,288 | 397,343 | 23.7 | 8.6 | 49.0 | 124 |
その他 | 322,189 | 401,145 | 25.8 | 11.5 | 51.7 | 40 |
非管理職 | 257,729 | 356,067 | 14.1 | 8.2 | 37.6 | 2,923 |
中間管理職 | 317,126 | 436,332 | 24.8 | 17.1 | 47.8 | 1,103 |
管理職 | 361,189 | 480,484 | 32.9 | 18.4 | 55.6 | 194 |
出典:日本看護協会看護職員実態調査2021 p.16
表 36 基本給額、税込給与総額(現在の主な業務・現在の職位)【正規雇用職員(フルタイム)対象】
平均基本 給額(円) | 平均税込 給与総額(円) | 平均通算 経験年数(年) | 平均勤続 年数(年) | 平均年齢 (歳) | 回答者数 | |
病院 | 277,696 | 386,046 | 17.0 | 11.3 | 40.2 | 3,664 |
診療所 | 259,062 | 354,563 | 19.8 | 7.0 | 44.2 | 84 |
助産所 | 240,250 | 371,675 | 12.0 | 9.0 | 33.0 | 2 |
行政 | 314,765 | 397,324 | 20.1 | 14.1 | 43.2 | 80 |
訪問看護 ステーション | 269,811 | 367,775 | 23.5 | 7.3 | 47.9 | 110 |
介護施設 | 257,822 | 346,236 | 23.5 | 6.7 | 48.9 | 90 |
看護系教育機関 | 340,239 | 406,168 | 23.7 | 8.6 | 49.4 | 119 |
その他 | 294,867 | 364,930 | 24.2 | 7.5 | 47.7 | 71 |
出典:日本看護協会看護職員実態調査2021 p.16
表 37 基本給額、税込給与総額(現在の勤務場所)【正規雇用職員(フルタイム)対象】
また、看護師の労働時間は一般的なライフスタイルとは異なります。「残業が多く定時で上がれない」「夜勤明けは夫が起きる時間が寝る時間」等どうしても家族とすれ違うこともあるでしょう。週末家族との予定を合わせるのが難しいこともありそうです。生活時間がずれてコミュニケーションが減ってしまえば、自然と雰囲気が悪くなる可能性もあります。
さらに、意外と多いのが休日出勤です。カンファレンスや研修会などで、自分のシフト以外に出勤しないといけない場面もありますね。十分にコミュニケーションが取れていないと、快く思われないこともあるかもしれません。
離婚を防ぐ方法
だからと言って心配することはありません。両立が大変なことは確かなことですが、家庭生活が順調な先輩看護師もたくさんいます。
「離婚を防ぐ」なんて大袈裟な表現かもしれませんが、雰囲気のよい家庭を作るための心がけを4つご紹介しますので、参考にしてみてください。
感謝の気持ちを伝え合う
気持ちというのは思っているだけでは伝わりづらいものです。
素直に「ありがとう」を日頃から伝えるように心がけてみるのはいかがでしょうか。
家事をお願いしたとき、できていない所に目が行ってしまうことはありませんか?「せっかくやってくれるなら最後までやってほしいなぁ」なんて思わずに、できたところに注目してみましょう。
感謝の気持ちは言う方も言われる方も心が温かくなりますね。「休日出勤でも快く送り出してくれた」「職場の愚痴を聞いてくれた」等、してもらうことに慣れてしまった事の中に、もしかしたら相手は頑張っていたり我慢していたりする事があるかもしれません。
小さなありがとうの積み重ねが夫婦の絆を強め、信頼関係をより一層強固なものにしてくれると思いますよ。
話し合いの機会を意識して作る
忙しく、共有する時間が短い夫婦こそ、気持ちを伝え合うことが大切です。夫婦なのだから「わかって欲しい」と甘えるのではなく、しっかりと互いの気持ちを口にして話す時間を作りましょう。
家事の分担や育児への考え方について、自分は当たり前だと思っていたことが相手にとってはそうではないこともあるかもしれません。
女の人が家事をするもの、子どものことは女の人が…などと相手が考えていたら、上手くいきませんね。共働きであれば家事は2人で分担、手伝うという表現自体おかしい!と考える方もいらっしゃると思いますが、そこは歩み寄って「自分はこう考えている」「ここを手伝ってくれたら嬉しい」とすり合わせていけるといいですね。
普段家事をしていないと具体的にどんなことをしているのかすら想像がつきませんから、ゴミ出しをしただけで「家事してるよ!」という相手もいるかもしれません。
家の用事を項目別に書き出して、それぞれの得意分野やライフスタイルで担当を分ける話し合いができれば、お互い押し付けられていると感じたり手伝ってくれないと不満を感じることは減りますよ。
身体と心のケアをする
看護師の仕事は激務で、しかも人間関係にも気を遣いますよね。ストレスを発散するべく、毎日家で愚痴をこぼしていた…なんて事態もないとは言い切れません。
逆に自分が毎日愚痴ばかり聞かされていることを想像すると気持ちがどんよりしてきませんか?夫婦はお互いに甘えられる存在ではありますが、一方で支えあう存在でもあります。
家族はサンドバックではありません。
相手への気遣いを忘れずに、ある程度は自分で自分をケアしましょう。
愚痴を吐き出す場所を家庭以外にも見つけたり、気分転換やストレス解消ができる趣味を見つけられるといいですね。買い物やスポーツも楽しいですが、いつもパワーがある時ばかりとは限りません。
疲れMAXの時にゆっくり自分を癒す、自宅でできる方法も見つけておきましょう。家族と一緒に過ごせる時は、お互いに楽しい時間を過ごせるよう意識したいですね。
働き方を変える
思いきって働き方を変えてみるのも一つの方法です。
看護師はさまざまな働き方がありますから、ライフスタイルの変化に合わせていきやすい職業だと言えます。とは言え、「いきなり時短勤務は収入面で厳しい…」という方は、在職中の職場で日勤常勤を検討するのも1つの手段として有効です。
夜勤がないだけでも夫婦の時間は以前と比べてぐっと増えるはずです。
更にプライベートの充実に重きを置く方は時短勤務もおすすめです。
育児中に時短勤務を希望する方も多いです。しかしいつまでも時短というわけにはいきませんし、子どもはいくつになってもそれなりに心配事が出てくるもの。
思いきって病棟から離れて外来へ移動したり、日勤のみで働けて比較的休みも取りやすい別の職場に転職する方法もあります。
仕事と家庭の両立に使えるあれこれ
次は仕事と家庭の両立に使えるサービスや便利なものをまとめていきたいと思います。上手に使って両立に役立ててくださいね。
院内保育所・病児保育
院内保育所とは、その施設で働く職員の子どもを中心に預かる園のことです。
病院の中にはこういった保育所を持っているところがあります。
院内保育所は不規則な勤務に対応している場合が多く、仕事の都合もわかってもらいやすいものです。看護師の働き方にも理解があるところがいいですね。
保育所は病院と同一の建物内に設置している場合もあるため、休み時間などの仕事の合間に子どもの様子が見られるので安心して働くことができるというメリットがあります。
また、子育て中の心配事といえば子どもが熱を出したときどう対応するかですよね。
シフトに穴を空けるわけにはいかないけれど、相手の仕事の都合もありますから毎回は子どもを頼めないと悩むこともあるかもしれません。そんな時、病児保育も一つの選択肢となり得ます。
登録や受診などは必要ですが、熱がある等普通の保育園では預かってくれない体調でも預かってもらえます。看護師等医療従事者もおり、安心です。
看護師コミュニティアプリ
家庭を持つ看護師だってたくさんいます。
家庭との両立は誰もが悩むもの。他の人がどんな工夫をしているのか質問してみるのもいいでしょう。今は看護師向けのアプリがたくさんありますが、こういった質問ができる看護師専用のコミュニティアプリがありますよ。
看護師だからこそ共感し合えることもありますが、職場の同僚には言いにくい話もありますよね。
匿名で使えますから、職場に気を遣わず話を聞いてもらえますよ。
便利家電・宅配
疲れて仕事から帰ると家事をするのは億劫なものです。
誰か代わりにやってほしいですよね。
そうです。代わりにやってくれる便利なものを使って楽をしましょう。
食器洗浄機やロボット掃除機などの便利家電を導入したり、タイマー予約を駆使して効率的に済ませてしまいましょう。買い物は宅配も利用して重いものや頻度を減らすことができれば負担も減ります。
決まったものは自動注文にしたり、買い物リストはスケジュールと一緒にアプリ等で家族と共有してしまいましょう。家事代行サービスなどを検討してみるのも良いかもしれませんよ。
人に頼る
看護師は勤務時間が不規則ですから、家族の中だけで分担してやろうと思うと大変です。
頼れる人には頼りましょう。
近くに親族がいれば心強いですし、自治体によってはファミリーサポート制度も利用できます。ファミリーサポート制度は地域において育児や介護の援助を受けたい人と行いたい人が会員となり、育児や介護について助け合う会員組織です。
予め登録して事前の準備を済ませておけば、保育園が使えない時間帯や休日に子どもを預かってもらうこともできます。
仕事と家庭の両立に使える制度
超過勤務対策
残業が多いと帰宅後の家事育児の段取りにも影響しますから、極力少ないと助かりますね。2019年4月から施行された働き方改革関連法によって、時間外の労働には規制が設けられています。
原則として月45時間、年360時間の時間外労働を上限と定めています。加えて、労働時間を把握するためにタイムカードやICカードによる労働時間の管理が義務付けられるようになりました。
病院で残業を完全になくすことは難しいことですが、自分の勤務先が超過勤務対策に積極的に取り組んでいるかどうか、確認したいですね。
育児短時間勤務制度
子どもが小さいうちから長時間保育園に預けるのは、子どもも大人も大変なものです。
そんな時は育児短時間勤務制度が使えますよ。
育児短時間勤務制度とは、子どもが3歳になるまでは原則1日6時間の勤務を常勤扱いとする制度です。
改正育児・介護休業法では3歳までとしていますが、最長利用期間は勤務先によって異なります。例えば「小学校に就業するまで可能」「卒業以降も利用可能」などそれぞれですから、自分の勤務先がどのような制度を取っているかを確認してみましょう。
短時間正社員制度
短時間正社員制度は日本看護協会が普及に力を入れている制度です。
正社員でありながら勤務日数や勤務時間を一般の正社員よりも短くできます。
育児短時間勤務制度とは違い、育児以外の理由も適用されますよ。ただし利用できる期間の定めはないため、それぞれの勤務先によって決められた方針に従うことになります。
仕事と家庭の両立におすすめの勤務先
クリニック
夜勤のない勤務でまず初めに思いつくのはクリニックでしょう。
クリニックは基本的に外来のみです。診療日や診療時間は決まっており、平日出勤で残業は少ないのが特徴です。
また、パートやアルバイトで働くなら勤務する曜日や時間を選べる職場もあります。子育て中の看護師にとっては働きやすいでしょう。
デイケア・デイサービス
デイケアはリハビリに特化した通所の介護保険サービスです。
一方、デイサービスは、要介護認定を受けた方の身体・認知機能の維持・向上のための介護保険サービスです。
デイケア・デイサービスは介護のイメージが強いですが、看護師も勤務していますよ。利用者の服薬管理やバイタルチェック、生活介助などが主な仕事です。
看護師の仕事はどちらも日勤のみで、基本的に夜勤はありません。土日・祝日が休みの勤務形態も多く、残業もほとんどない職場が多くなっています。
訪問看護
訪問看護は病気や障害を持つ方の自宅に看護師が訪問し、主治医の指示の下に看護を行います。
病棟と違って少人数で動くため、ある程度経験を積んできた人に向いています。土日・祝日休みも多く、基本的に夜勤はありません。
高齢化社会にともない訪問看護ステーションの数は全国で増加しており、そこで働く看護師も増加傾向です。
正社員の求人だけでなく、日数や時間を選べる非常勤の募集も多いため、その中から仕事と家庭を両立できる転職先を選ぶことができます。
産業看護師
企業で従業員の健康管理をするのが産業看護師です。
産業保健師を置く所が多いですが、最近は看護師も増えてきました。
健診の事後措置等「予防」がメインの仕事になります。
病院の「治療」の考え方とは少し異なるため、そこに違和感を抱く方は注意が必要です。また、パソコンを使用することが多いので抵抗のない方に向いています。
企業は土日休みがほとんどのため、一般企業で働く産業看護師は基本的に土日が休みです。更に日勤のみの勤務となるので家庭のある方などはとても働きやすい職場であると言えます。
保育園看護師
保育園看護師の仕事は、園児の健康管理や健診補助、保育士のサポート等です。近年保育園看護師を置く保育園は増加し、求人も増えています。
保育園は、園の行事などを除けば基本的に日曜・祝日は休みで、もちろん夜勤はなく残業もほとんどありません。
子育て中の看護師にとってはワーク・ライフ・バランスが取りやすい職場といえます。ただし、大規模の保育園でなければ、1つの保育園に看護師は1名という職場が多いです。
先輩看護師がおらず仕事の進め方が不安、休みが取りづらいなどのデメリットがあります。
派遣や単発で働く
その他、働き方を派遣や単発に変更する方法もあります。
これなら子どもの習い事や長期休みに合わせて空いた時間に勤務するなど、かなり家庭寄りな働き方ができます。
なかなか近くに頼れる人がおらず家庭中心にならざるを得ない看護師におすすめです。
応援ナースや修学旅行等の引率をするトラベルナース、健康診断や訪問入浴、デイサービスの単発求人等があります。転職サイトなどに登録する必要はありますが、自分のスケジュールに合わせて働けますよ。
まとめ
今回は離婚率が高いと思われている看護師が離婚を防ぐ方法と、仕事・家庭を両立させるヒントについてまとめました。
看護師の仕事は忙しく家族と予定が合わなかったり価値観を擦り合わせる話し合いの時間が取れずすれ違ってしまうことが考えられます。日頃からお互いを思いやり、話し合いの時間が取れるといいですね。
また便利な家電やサービス等を使って家事の負担を軽減したり、頼れる人や制度をしっかり使いましょう。
また働き方を変えるのも一つの方法です。看護師には働き方がさまざまあります。自分や家族に合ったスタイルを見つけて、無理なく充実した看護師ライフを送ってください。
この記事を書いた人
森野 かおり
新潟大学医学部看護学科卒業。看護師・保健師・養護教諭免許取得。健診センターや保健室を経験し、現在は保健師として特定保健指導に従事。講師やwebライターとしても活動する2児の母。