ケアマネージャーと看護師の違いとは?仕事内容・給料について解説

看護師として働いている人の中には、ケアマネージャーで働こうか迷っている方もいるでしょう。今回は、ケアマネージャーと看護師の違いについて、解説していきます。

看護師がケアマネージャーの資格を取って、ケアマネージャーとして働くメリットなどについても解説しているので、参考にしてみてください。

1.ケアマネージャーと看護師の役割と仕事内容

ケアマネージャーの仕事とは、どのような仕事なのでしょうか。

「ご自宅で介護が必要な人のケアプランを立てるということだけは知っている」という方も多いでしょう。
まず、ケアマネージャーの役割と仕事内容について、解説していきます。

また看護師の仕事との違いを分かりやすくするために、看護師の役割と仕事内容についても解説していきます。
ご自身の振り返りの参考にしてみてください。

1-1 ケアマネージャーの役割と仕事内容

ケアマネージャーの一番の役割は、簡単に言うと在宅などで過ごす要介護者と介護保険サービスの事業者との橋渡しをすることです。

そのためには、要介護者や家族がどんなことに困っていて、どんなサービスを受けたいか話を聞きます。

そして、今後どのような生活をしていきたいか、どんなことができるようになりたいかといった目標を立て、ケアプランという計画を立てた上で、それが実行できる事業者を選び、要介護者や家族に提案していくことになります。その内容を紙面にして、ご本人やご家族の同意を得て、サインをいただきサービスが開始されます。

また、ケアマネージャーの仕事はケアプランを立て、事業者を提案して終わりではありません。

月に1回モニタリングでご利用者様に話を聞き、サービス内容で困っていることはないか、また改善されたことがあるかなどを評価して、必要であればケアプランの見直しをしていきます。

そして、ケアマネージャーの報酬は、ご利用者様が支払う分はなく、全額公費負担です。
したがって、その給付管理を毎月行うのもケアマネージャーの仕事です。

1-2 看護師の役割と仕事内容

看護師の仕事は、みなさん仕事をしているためご存じの通りですが、再度確認しておきましょう。

看護師の定義は以下のようにされています。

第五条 この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。

護師は、医師の指示のもと医療行為を実施したり日常生活の世話をするのが仕事です。

また、患者様やご家族の精神的なサポートをしていく役割も担っています。

ケアマネージャーと関わる看護師は、病院の在宅復帰病棟勤務の看護師や訪問看護師が多いです。

この場合の看護師の役割としては、医療的な面からみて今の患者さんやご利用者様、家族の状況についてお話をしたり、アドバイスをする立場になります。

そして、その看護師からの話なども踏まえて、ケアマネージャーがケアプランを作成していくことになります。

2.ケアマネージャーと看護師の給料の違い

ケアマネージャーと看護師の給料について比べていきたいと思います。

それぞれの平均年収などについて、解説していくので参考にしてみてください。
ケアマネージャーと看護師の給料は、令和2年2月の状況を厚生労働省が発表した資料では、以下のようになります。

【常勤の平均月給】(令和2年2月の平均給料-平成31年2月の平均給料)

令和2年2月平成31年2月
ケアマネージャー362,510円351,440円11,070円
看護師383,560円376,850円6,710円

【非常勤の平均月給】(令和2年2月の平均給料-平成31年2月の平均給料)

令和2年2月平成31年2月
ケアマネージャー143,960円132,910円11,050円
看護師126,850円123,830円3,020円

このことからもわかるように、ケアマネージャーの給料が上がってきたとはいえ、看護師の方が給料は高いことが分かります。

したがって、ケアマネージャーをするよりも看護師の方が収入が多くなるため、ケアマネージャーの資格をとっても看護師で働いている方が多いです。

ただ、看護師の給料が常勤で平成31年から令和2年の間に6,000円程度なのが、ケアマネージャーの方は、10,000円以上あがってきています。

これは、現在在宅医療がすすめられてきており、ケアマネージャーの需要も増えてきているところも関係しているでしょう。
給料面では、看護師の方が高いのでやっぱり看護師で働く方がいいと思う方もいるでしょう。

ただ、看護師がケアマネージャーを行うことで、看護師にもご利用者様にもメリットになることがあります。

次にご紹介していくので、参考にしてみてください。

3.ケアマネージャーの資格を看護師が取るメリット

ケアマネージャーの給料は、看護師よりも少ないのが事実です。
しかし、それでも取っておくといいメリットがあります。

  • ケアマネージャーへ提案するときに的確なアドバイスをすることができる
  • 介護の視点だけでなく、医療的な面からも考えてケアプランを作ることができる

上記2つのメリットの詳細について解説していきます。

3-1 ケアマネージャーの行動の意図が分かる

まず、ひとつ目がケアマネージャーの行動している意図が分かるということです。

看護と介護は、行動自体は同じように見えても、その行動の中での視点が違います。
看護師は安全・安楽に介助を行うだけでなく、患者さんや利用者さんの体調面もアセスメントしながらケアを行います。

したがって、介護士の言動に疑問を抱くこともあるでしょう。
しかし、ケアマネージャーの仕事は介護についてもよく理解しておかなくては、その人にあったケアプランの作成はできません。

病院の在宅支援復帰や訪問看護で働いている看護師さんの場合、ケアマネージャーの仕事、介護保険について理解しておくことで、医療的な観点から的確なアドバイスをすることも可能になります。

したがって、ケアマネージャーになろうと思わなくても、取っておくといい資格です。

また、在宅にかかわるところで看護師として働いていくと、「こうしたらもっと患者さんや利用者さんは良くなりそうなのに」という思いが出てくることがあります。

そんなときも、資格を持っていればすぐにケアマネージャーへ転身することも可能です。

3-2 介護・医療・看護喉の視点からケアプランが作れる

看護師がケアマネージャーとして働くメリットとしては、様々な視点から考えてケアプランを立て、ご利用者様や家族に提案できるということです。

介護系の資格からケアマネージャーになっている場合、やはり介護の視点が多くなります。

しかし、看護師の場合は介護の視点はもちろんのこと、看護師時代の経験で今のご利用者様の状況をアセスメントしたうえで、必要なサービスを提案できるところが強みです。

ご利用者様の全体像を把握して、アセスメントしていくのは、昨日今日でできることではありません。

ケアマネージャーの資格を取るには、医療現場や介護施設などで5年以上の経験が必要になります。
したがって、看護師の場合新卒で就職するのは、病院が多いです。そこで培ったアセスメント能力をケアマネージャーになっても、発揮できます。

本当に、これは看護師でなければ出来ないケアマネージャーの形ではないでしょうか。

4.ケアマネージャーの資格を持った看護師におすすめの職場

つぎに、ケアマネージャーの資格を持って働くといい職場について、ご紹介していきます。

4-1 居宅介護支援事業所

まずは、居宅介護支援事業所です。

ケアマネージャーがケアプランを作ってくれる事業所です。
実際に、ケアマネージャーとして働きたいという人におすすめの職場です。

先ほどもお伝えしましたが、看護師の資格をもってケアマネージャーになるのは本当にご使用者様にとっては、メリットが多いです。

給料が看護師よりも安いので、ケアマネージャーの資格を持ってても仕事にはついていない人も多いです。

しかし、最近では「私ならこうするのに」という思いから、看護師がケアマネになっている人も増えてきています。
ケアマネージャーの資格を取った際には、ぜひケアマネージャーとして働くことも考えてみることをおすすめします。

4-2 訪問看護

つぎにおすすめなのが、訪問看護で看護師をしている人です。

訪問看護は、介護保険を利用している人が多いサービスになります。

訪問看護師をしていると、介護サービスについて医療従事者の視点からアドバイスをすることも多々あります。
時には、新しくサービスを追加したりサービスの変更を提案することもあります。

その際、介護保険制度の制度上制限が設けられていることなどもあり、働いていないまでもある程度の介護保険制度を知っておくと、的確なアドバイスをすることができるでしょう。

4-3 介護施設

介護施設でもケアマネージャーの知識や技術を使うことができます。

在宅支援と施設でまたケアマネの仕事内容は変わってきますが、デイサービスなどではやはりケアマネージャーとのやり取りは多い傾向にあります。

看護師の立場から、医療的な面で経過観察してほしいときには連絡を入れたり、訪問看護が入っている方であれば、臨時での訪問をお願いしたりすることもあるでしょう。

そんなとき、介護保険制度を知っておくことで、ケアマネージャーとのやり取りがスムーズに行えます。

それだけでなく、ご利用者様の身体の様子から通所を増やした方がいいと判断したときにも、デイサービスの相談員なあどから提案することもありますが、看護師が身体の様子を丁寧に説明して、提案することもあります。

そんなときにも、介護保険制度を知っておくことで、ケアマネージャーへの提案も通りやすくなるでしょう。それは、所属しているデイサービスにとってもメリットになることと言えます。

4-4 在宅復帰病棟

訪問看護や介護施設の看護師の場合、介護保険で訪問させてもらったりする分、介護保険制度について学べる機会が多いです。

一方、在宅復帰病棟の看護師の場合、自ら学ぼうと思って行わないと学べない環境です。
しかし、在宅復帰に向けて介護保険を申請したり、ケアマネージャーとの担当者会議に参加する機会は多いでしょう。

その時に病院での様子から、取り入れた方がいいサービスなどのアドバイスを求められることもあります。

そんなとき、ケアマネージャーの資格を学び、持っておくことで、ケアマネージャーがケアプランを作るにあたって必要な情報やサービスを的確に伝えることができます。

そして、密に在宅支援に関わっていると、自分でケアプランを立てたくなって来る看護師もいます。
そんなときも、ケアマネージャーの資格を持っていれば、居宅介護支援事業所などへの転職も可能です。

病院によっては、居宅介護支援事業所や訪問看護も行っているところもあるため、移動させてもらうこともできるでしょう。

5.ケアマネージャーと看護師、どちらで働いた方がいい?

ケアマネージャーの資格を取っておくと、さまざまなところで役に立つということはお判りいただけたでしょうか。

でも、せっかく取ったならケアマネージャーとして働きたい気持ちも出てくるでしょう。

実際のところ、ケアマネージャーと看護師、どちらで働く方がいいのでしょうか。
これは、ご自身の目指すところや患者さん、ご利用者様にどうかかわりたいか、ということが一番です。

もちろん、給料面で考えていくのも悪くはありません。

ただ、みなさんはケアマネージャーの資格を取ってそれをどう活用していきたいと思っているのでしょうか。

「看護師として病気の悪化を防いだり、改善していくことに対してケアマネージャーの知識ももって関わっていきたいのか」
「在宅で過ごす患者さんやご利用者様がよりよく生活できるように、看護師としての視点も入れながら支援していきたいのか」
このような、人それぞれの今後のキャリアプランによります。

ただ、看護師の資格を持ったケアマネージャーは、介護職からケアマネージャーになった人よりも幅広い視点で支援していくことができ、ご利用者様にとってはかなりメリットと言えます。

ぜひケアマネージャーとして働くことに、挑戦してみてください。

6.ケアマネージャーの資格を看護師が取得する方法

指を立てる看護師

最後に、これからケアマネージャーの資格を取ろうと思っている方に、看護師がケアマネの資格を取る方法について解説していきます。

まず、ケアマネージャーになるためには、「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格する必要があります。

この試験に合格して、研修を終えることでケアマネージャーの資格がもらえます。
ケアマネージャーの試験には、受験資格があります。

【受験資格】
看護師や介護福祉士などの国家資格、生活相談員、支援相談員、相談支援専門員、主任相談支援員のいずれかで5年以上かつ900日以上の実務経験という受験資格が定められています。

この受験資格が満たされたら、次に試験です。

試験は以下のようになります。

■介護支援分野
介護保険制度の基礎知識要介護認定等の基礎知識居宅
施設サービス計画の基礎知識等
25問

■保健医療福祉サービス分野
保健医療サービスの知識等(基礎/総合)
20問(基礎:5問/総合:15問)

福祉サービスの知識等
15問

以前は、看護師や介護福祉士など国家資格を持っている人は試験の一部が免除されていました。

しかし、2018年から廃止されたため、すべての科目について受験する必要があります。

ケアマネージャーは、この試験で資格をもらえるわけではありません。
この試験はあくまでも、研修に参加するための試験です。

試験合格後には、研修が待っています。
もちろん、受験時には受験資格を満たしているかの証明書を提出しますが、職場への理解も必要になります。

また、ケアマネージャーは5年ごとの更新になります。
ケアマネとして働いていない場合、5年ごとの更新を忘れてしまったという方も大丈夫です。

再研修を受ければ、またケアマネージャーとして働くための登録ができます。

もし、更新を忘れてしまっており、ケアマネージャーとして働きたいという方は、早めに再研修について調べておくようにしましょう。

7.まとめ

今回は、ケアマネージャーと看護師の違いについて解説してきました。

ケアマネージャーは看護師よりも給料が安いから、と迷っている方もいるでしょう。
しかし、給料以上にご利用者様にとってよりいいケアプランを立て、貢献していけるのは確かです。

そして、その分やりがいも見出せるでしょう。

また、給料の違いをご紹介したときにもお伝えしましたが、ケアマネージャーの給料は看護師よりもより上がってきています。

今後も在宅支援は、ますます需要が上がって来る分野です。
さらに、給料が上がってくる可能性も考えられます。

看護師の方は、現在ご自宅で生活していて困っている方のために、ケアマネージャーとしてぜひ手助けをしていきましょう。
そのためにも、ケアマネージャーの仕事にぜひチャレンジしてみてください。

この記事を書いた人

槇田 佳織

神奈川県立衛生短期大学衛生看護科卒業。急性期病棟、慢性期病棟、認知症対応型デイサービスや訪問看護など、いろいろな職場を経験。看護師ライターとして今までの経験を活かし、医療や看護・介護などを中心に執筆している1児の母。今後は小児がんのきょうだい児支援や看護師への支援などについても活動していく予定。

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