「さあ、もう一度看護師として働こう!」「でも、大丈夫?」「私、ついていける?」
ブランク看護師なら誰でも心配です。ブランクが長いとなおさらですね。
看護師の仕事は非常にハード。また、女性中心の職場のためか人間関係も問題になりがち。定年までに数回転職する看護師はとても多く、ブランク後に復職するのは珍しいことではありません。
ブランク後の復職を経験して言えることは、ブランクがあっても看護師としていきいきと働き続けることは可能だというです。
看護師は女性の職場。ゆえにライフスタイルに合わせて、職場を一度離れることは十分に理解できます。他の職業に就いていたとしても、その経験を看護に活かすこともできます。
ですので、ブランクがあるからと諦めるのはもったいないです。ブランクがあっても実際受け入れてくれる職場はたくさんありますよ。
とはいえ、やはり復職に不安はつきもの。人の命にかかわる仕事をしているのですからあたりまえですよね。今回はそんなあなたの不安を少しでも減らし、復職を成功させるコツをお伝えします。
団塊の世代が後期高齢者となる2025年、医療、介護のニーズが高まることで看護師不足が予想されています。
次の図をみてください。
2018年では総人口が27万人減少、高齢者は44万人増加しています。看護される側が増えていく一方、看護師は減少傾向ということも言えます。
この「2025年問題」で看護師の人材確保が必要となる中、潜在看護師は全国に約71万人。
厚生労働省や看護協会では看護師の復職支援を強化しようと今、様々な取り組みが行われています。復職に必要な研修や勤務環境の改善にも取り組まれています。
復職したいブランク看護師には心強い環境が整っていますね。「もう少し収入が欲しい。」「子育てが落ち着いた。」など復職を考えている方は、是非この記事を読んでご参考になさってください。
目次
ブランクのある看護師が復職まえに準備しておくこと3選
せっかく勇気を出して復職したのに問題続発。結局辞めることになった、なんてことにならないように事前準備は大切です。自分に合った働き方ができるように、具体的に何をすればいいのかピックアップしてみました。
- 家族とよく相談する
- 知識をアップデートする
- 勤務先をイメージをしてミスマッチをふせぐ
一つずつ詳しく解説します。
家族とよく話し合う
復職すると家にいない時間も多くなり家事、育児が今まで通りにいかないことも。
保育園の送り迎えをどうするか、こどもが病気の時に仕事を休んでもらえるか、家事を手伝ってもらえるかなどご家族で事前に話し合っておきましょう。
面接では「ご家族の協力はありますか。」とよく質問されます。協力を得ないまま仕事に復帰しても、職場に迷惑をかけることになりかねません。夜勤、残業、休日出勤などがあることを理解してもらい了承を得ておきましょう。
知識をアップデートする
医療は日々進歩しています。「技術・知識の不安」は復職前に本やネットで調べたり、復職支援セミナーに参加して自信を取り戻しておきましょう。勉強することで次第に復職への意欲も高まります。その熱意は面接担当者にもアピールでき採用につながるでしょう。
勤務先をイメージをしてミスマッチをふせぐ
新しい職場はどのような職場がいいか、イメージしておくことも大切です。「もっとスキルを磨きたい」「ゆっくりした環境がいい」家庭と両立できるのか」「体力はもちそうか」などです。
将来の自分を描いて、それに向かうにはどうすればいいのか。施設の大きさ、病床数、急性期、慢性期、年間休日日数、給与など様々なことをイメージしておけばミスマッチを防げますね。
ブランク看護師の大きな味方復職支援セミナー
日本看護協会による都道府県ナースセンターでは「復職支援の相談および研修事業」が実施されています。また、全国の医療機関でも復職支援セミナーが行われています。
主に、「採血]「注射]「輸血]「喀痰吸引」「ME機器」などの講習を受けられます。病院では医師やベテラン看護師に研修をおこなってもらえることも。自分以外のブランク看護師と合って話ができるのもうれしいですね。
地域、病院によって講習内容はかわるので、自分が住んでいる都道府県のナースセンターもしくは医療機関に問い合わせてみてください。
ブランク年数別にみる復職時の注意点
ブランクが長ければ長いほど、勘を取り戻すのは時間がかかります。ブランクは短く、経験年数は長くが理想ではありますが、実際には10年、20年を経て復職された方もいます。
経験年数やスキル、体力を考慮して新しい職場をきめることをおすすめします。
ブランク5年
ブランク5年は長いのか短いのか。離職前の経験年数によって感じ方はかわるかもしれません。
経験年数が短い場合は、入職時は新人看護師同様とされることも。事前学習をしっかりし、さらにプリセプターがつく職場でしたら安心ですね。
また、離職前の勤務先に戻って働くという選択はどうでしょうか。病院のシステムやドクターのくせなどは変わっていないでしょうし、知っている顔もいて安心してスタートできそうですね。
スキルアップしたい場合も、一度ゆっくりとした職場でからだが慣れてから挑戦されてみることをおすすめします。
経験年数が長い方も事前学習は必要ですが、技術や患者との接し方、アセスメント方法などは体が覚えているので勘を取り戻すのは早いでしょう。
ブランク10年
結婚を機に退職、妊娠、子育てを経て10年ぶりに看護師に戻られる方も多くいます。10年だからといって復職できないわけではありません。ですが、やはり10年経てば医療の世界はずいぶん変わっています。
前職では紙媒体が多かったのに、新しい職場ではすべてパソコン。電子カルテになっていてあせったなんてことも。ある程度基礎的なことは覚えておかれた方が入職後スムーズに復帰できるでしょう。
10年前とは治療法がかわっていることもあるので、知っているからと自己判断せず、スタッフにアドバイスを求めましょう。
ブランク20年以上
ブランク20年であればその間にもしかしたら違うお仕事をされていたかもしれませんね。
病院、施設にはいろいろな方が来られます。看護師以外の経験は、視野を広げ仕事に活かせます。ブランクが長くてもマイナスではありませんね。
ブランク20年ともなると、もしかしたら褥瘡を乾かしていた時代でしょうか。筆者の若いころはそうでした。薬も種類が豊富になり、使い捨て機材も多くなりました。
ついていくのは大変ですが、事前にセミナーを受講することで技術・知識をアップデートできます。
新たな職場は、体力面でも負担が少ないところを選びたいですね。
ブランク明けで選ぶならここ!おすすめの勤務先を5つ紹介
- 個人病院
- 老健施設
- クリニック
- 健診センター
- 透析室
個人病院
ブランク後の職場選びには、教育体制が整っていて、プリセプターがついている職場が安心です。また、以前に経験のある診療科だと勘も取り戻しやすいでしょう。
個人病院は他の施設にくらべ、看護師の人数が多く指導も受けやすいです。病床数が300床以下の慢性期病棟だと、比較的落ち着いているのでスタートするにはいいでしょう。
特に療養病棟だと入退院も少なく、毎日ほぼルーチンワークで終わることも多いので仕事を早く覚えやすいです。
病院だと託児所も院内にあるところも多いので、おおきなメリットですね。
老健施設
病院のように処置は多くなく、バイタルサイン、褥瘡処置、胃ろう介助、服薬管理などが主な仕事です。ルーチンワークなので覚えるのは早いでしょう。
気を付けたいのは、老健施設では看護師の人数はぐっと少なくなります。さらに時差出勤が多く、数時間看護師が自分一人となる時間帯も。
利用者様に何かあれば一人で判断しなければいけません。先生に報告するのか、様子をみるのか、どのような処置をしなければならないかなどの判断が必要になります。
また、夜勤がなくオンコールの場合も多いので勤務外にも拘束されることが週に何回かあります。
対応力、判断力に自信があり、お年寄りとゆっくり向き合いたい方に適した職場ですね。
クリニック
夜勤や日曜出勤がないのがクリニックの魅力ですが、その分給料は病棟勤務に比べて下がります。
処置は病棟に比べると少なく、患者さんを抱えるなどの重労働もないため負担が少ない職場です。
クリニックは18時ごろまで開いていることも多いので、お子さんが小さい方は支障があるかもしれません。
また、看護師の人数が病院に比べると少ないので休みがとりにくく、子どもの病気等で早退することがきびしいというデメリットもあります。
健診センター
健康診断や人間ドックを行います。主に採血、血圧測定や内視鏡の介助など、仕事はルーチン化されているので慣れるのも早いです。
巡回バスの場合は朝早く出発するので、子育て中の方などはご家族の協力が必要となります。
パートは時間内に帰宅することがほとんどですが、正社員になると片付けや明日の準備などのがあるので残業があるかもしれません。
とはいえ、夜勤はなく、土日も休みなど働きやすく負担も少ない職場といえるでしょう。
巡回健診は春、秋は忙しいのですが、その他の季節はほとんど健診が入らないので、パートを希望される方は事前に勤務体制を問い合わせておかれると安心ですね。
透析室
透析室の看護は穿刺、抜針、止血、バイタル測定とほぼルーチン化されています。専門性がありスキルを身につけたい方にはおすすめです。
ほとんどの透析室は日祝が休みで、家庭を持つ方にぴったりの職場です。
残業も少なく、夜勤がないこともおすすめポイントです。
ブランク後雇用形態はどうする?オススメは負担の少ないパート
正社員で入るか、パートでスタートするか迷うところですね。お給料面では断然正社員がいいのですが、その反面、残業や夜勤があったり委員会があったりと時間の拘束も長くなりストレスに。
パートは夜勤やリーダー業務はない、など負担が少なく気持ちに余裕をもってスタートできます。もちろん、職場によって変わってきますが、最初からたくさんのことをこなすのはきついなあと感じるようでしたらおすすめです。
頑張って正社員で入ったけど、結局プレッシャーでストレスになり長続きしなかったということにならないように。はじめはパートでスタートし、慣れてきたら常勤を検討してもいいでしょう。
ブランク後スムーズに働くために求人票はここをチェック!
新しい職場では早くチームの一員として働きたいですよね。ブランク看護師にとって、どんな職場が働きやすいのでしょうか。求人票でチェックしたい項目をあげてみました。
- ブランク歓迎の求人をえらぶ
- 経験のある診療科目をえらぶ
- 教育制度が整っている職場をえらぶ
- 人間関係重視でえらぶ
ブランク歓迎の求人をえらぶ
看護師転職サイトを見ると、ブランク歓迎の求人はたくさん出ています。そのような職場はブランク看護師にも理解があるので安心です。あなた以外の元ブランク看護師にも会えるかもしれません。心強いですね。
経験のある診療科目をえらぶ
どの診療科目をえらぶのかは、新しい職場にすぐなじめるかどうかをきめる重要なポイントです。経験した診療科目など以前勤めていたころと近い環境であれば、比較的早く仕事に慣れるでしょう。
ですが、以前急性期にいたからといって、ブランク明けでいきなり急性期病棟やICUを希望しては体をこわしかねません。
ブランクで体が慣れていないうえ、新たな環境で気を使い、勉強もし、さらに家庭もあるとなると一気にストレスがかかりすぎます。慢性期のゆったりとした職場、夜勤がない、もしくは少ないところでしたら負担も少ないでしょう。
教育体制が整っている職場をえらぶ
教育体制が整っている職場であれば、研修や勉強会も定期的に行われます。大変ですが参加してみましょう。特に職場で行われる勉強会はほとんど無料なので参加しないと損です。
外部から専門の企業が講習をしてくれることもあるので、一人で勉強するよりは効率もいいですね。
人間関係重視でえらぶ
ブランク前に人間関係がいやで職場を離れた方は、人間関係も一緒に調べておきましょう。
求人票にはアットホームと書かれていますが実際には違うことも多いです。職場の雰囲気などは、看護師転職サイトの担当者に尋ねてみることで詳しく教えてもらえます。スタッフの年齢層なども一緒に尋ねてみると雰囲気もわかりやすいですね。
ブランク看護師の履歴書・面接
復職を成功させるためには、履歴書と面接でしっかりとアピールしなければいけません。ポイントをあげてみましたので、ご参考になさってください。
履歴書
即戦力がほしい採用担当者は、あなたにどのような経験があり、どんなスキルを身につけているかを知りたいと思っています。
看護師経験は何年か、病院の規模、何科に所属していたのか、リーダー、学生指導、役職の経験などを詳しく書きましょう。
具体的に「病院名」「所属科」「病棟」「外来」「何年勤務したか」などを記載するといいでしょう。
例えば、「〇〇総合病院の内科病棟で8年勤務していました。リーダー業務ほか、学生指導を担当していました。」などです。
なぜまた看護師に復職しようとおもったのか、なぜこの病院をえらんだのかなど志望動機もしっかりと書きましょう。
支援セミナーなどで事前に準備している場合も、「やる気がある」とみてもらえるのでしっかりアピールしましょう。
面接
まずは事前準備
久しぶりの面接は緊張しますよね。もう長いこと面接を受けていないと忘れていることも多いと思います。
面接先のホームページなどをみて、病院理念などを理解しておきましょう。
よく質問されるのは、
- ブランクの理由、その間に何をしていたのか
- 復職を決めた理由
- 看護観
- なぜこの職場を選んだのか
- 復職することで家族のサポートは得られるか
暗記する必要はありませんが、短く、わかりやすく答えられるよう練習しておきましょう。
スーツ、バッグ、靴の準備はできていますか。基本ですが、履歴書などの準備で頭がいっぱいで、いざ面接日になって「靴がなかった。」なんてことにならないように。面接後は施設を案内していただけることが多いです。歩きやすく靴音などが響かない物を選びましょう。
面接は笑顔でアピール
面接で第一印象は大切です。面接室に入ったら笑顔を忘れずに。どれほどすごい経歴の持ち主でも、笑顔が無ければマイナスです。採用担当者は、「ここの職員とうまくやっていけるかな。」ということもみています。笑顔と落ち着いた態度で面接にのぞみましょう。
また、面接時は職場の雰囲気もしっかり見ておきたいですね。
受付の対応、ナースコールの頻度、ナースコールへの対応がはやいか、すれ違ったときの職員の態度などしっかりと観察しましょう。
職員の態度は病院の雰囲気や人間関係、接遇教育がいきわたっているか、ナースコールの頻度や対応は病院の忙しさを知るひとつの目安となります。
まとめ
今回はブランク看護師の復職について記事にしました。
- 復職前には事前に準備が必要。特に家族の協力は必須。
- ブランク明けは慢性期の職場でゆっくりスタートが安心。
- ブランク年数が長くても、支援セミナーなどで知識をアップデートして自信をつける。
- 履歴書には経歴、志望動機をしっかりと。面接は笑顔でアピール。
- 看護師転職サイトを利用し効率よく希望の職場を見つける。
昨今、看護師不足、潜在看護師についてクローズアップされることが多くなりました。
求人票を見てもわかるように、ブランク看護師を応援している職場は多いです。
私も、10年のブランク後に個人病院へ復職した時には不安しかありませんでした。ですが、初日ロッカールームで白衣に再び手を通したときに、とても感動したことを覚えています。
その復職からさらに5年、看護師として病棟で立ち続けてきましたが、30代のころには得ることができなかった知識、技術を積み、さらに今までの経験を活かして患者と深く接することができ、とても充実した日々でした。
人間関係にも重みが加わり友人も増えました。この経験がなければ、私は自信をもって看護の仕事を語れなかったように感じます。
看護師の免許は一生ものです。この記事が復職を考えておられる方のお役に立てれば幸いです。
この記事を書いた人
M・K
久留米医師会看護専門学校卒業。正看護師免許取得・イギリス正看護師免許取得。 看護師歴25年以上。病院・クリニック・健診センター・高齢者施設などいろいろな職場を経験し、現在は看護師ライターとして活動中。