来年から看護師として働き始める方、現役看護師で転職を考えている方にとって自分に合った診療科に配属されるかどうかは気になるところです。
希望の診療科があれば、面接で熱意を伝える方法もあります。もし自分に合った診療科が分からないなら、事前に把握しておくことが必要です。なぜなら、就職後のストレスを軽減し、ライフスタイルに合った働き方の実現ができるようになるからです。
そこでこの記事では、おすすめの診療科や選ぶ際のポイントについて解説します。あなたに合った診療科を検討するヒントとして、ご活用していただければ幸いです。
目次
診療科は60種類以上ある?興味のある診療科がきっと見つかる
厚生労働省のデータによると、診療科は60種類以上もあることがわかります。
看護師は、医師をはじめ理学療法士や放射線技師のように専門科が決まっておらず、すべての診療科が勤務対象となります。そのため、幅広い知識と柔軟性が求められる職種と言えます。
また病院により専門科ごとに区分されているところもあれば、数診療科で構成された混合病棟の場合もあります。数年おきに人事異動もあり、都度専門性を高めていく必要があるのです。
看護師におすすめの診療科とその理由を徹底解説
いざ就職や転職を考えても、自分に合った診療科がわからないという人も多いのではないでしょうか。実際、働いてみないと自分に合っているかどうかの判断は難しいでしょう。
そこでこの章では、就職や転職におすすめの以下5つの診療科について解説します。
- 小児科
- 内科
- 整形外科
- 産科
- 精神科
おすすめの理由を知り、自分にとって働きやすい診療科かどうかを判断するヒントにしてください。
1. 小児科
小児科看護師がおすすめの理由は、以下の2つです。
- 子供と関われる
- 成長を見守れる
小児科は0〜20歳の子どもの病気を治療する診療科です。発達段階を考慮して子どもの成長をサポートしたり、心のケアをしたりするなど、他の診療科にはない看護の特徴があります。
子供の回復力を最大限引き出すための看護は、やりがいやモチベーションを感じるでしょう。私が初めて配属されたのも小児科でした。特に発達過程に合わせた指導やコミュニケーション方法、催し物の企画などを考え実施する中で、小児科看護師として働く誇りを持つことができました。
また育休復帰の先輩が多く、「子育てを経験して小児科で働くと視野が広く働きたすい」と話していました。そのため、育休の復帰先にもおすすめの部署と言えます。
子どもが好きで成長・発達にあった看護がしたい方は、小児科が良いでしょう。
2. 内科
内科看護師がおすすめの理由は、以下の3つです。
- 侵襲の大きな処置が少ない
- 患者の苦痛が理解しやすい
- 基礎知識が活かしやすい
内科病棟は外科系の病棟に比べて、侵襲の大きな処置が少なく、血液や傷口を見るのが苦手という方におすすめです。
一方で視覚的j情報が少ないため、病気の経過が判断しづらいことがあげられます。そのため、患者の様子に加え、検査データなどの客観的情報から経過を推測するスキルが鍛えられるでしょう。
また消化器・呼吸器内科の症状は、私たちが普段風邪や体調不良で訴える症状と近いため、イメージがしやすいメリットもあります。イメージがしやすいため、看護学生で習った基礎知識が活きやすく、患者の苦痛を理解しやすいでしょう。
侵襲の大きな傷を見るのが苦手だったり、学生時代に習った基礎知識を活かしたりしたい方は、内科を希望すると良いでしょう。
3. 整形外科
整形外科看護師がおすすめの理由は、以下の3つです。
- 生死に関わることが少ない
- 意思疎通がしやすい患者が多い
- 回復過程の患者が多い
整形外科の特徴は、生死に関わることは少ないことです。リハビリを経て、元気に退院していく患者が多いので、回復期の看護に携わりたい方におすすめです。一方で病院にもよりますが、もちろん骨盤や頚部骨折など生命に直結する病気もあります。
また比較的患者層が若いため意思疎通がしやすく、コミュニケーションに難航することは少ないでしょう。
生死に関わる看護が苦手であり、回復過程を中心に看護展開したい方は、整形外科を検討してみてはいかがでしょうか?
4. 産科
産科看護師がおすすめの理由は、以下の3つです。
- 出産に立ち会える
- 新生児の看護ができる
- 妊娠・出産・子育てに関する知識が身に付く
生命が誕生する瞬間に立ち会えることは、他に例えようがない唯一無二の感動であり、産科看護師だけの特権です。命の大切さや子どもが生まれてくる奇跡、女性が母親になる姿に関わらせてもらえる経験は、看護師としてだけでなく、人としての財産にもなります。
また、妊娠・出産への基礎知識が身に付くため、自分が妊娠した時にも安心でしょう。出産経験があれば、妊婦の気持ちをより理解できます。ホルモンバランスの乱れにより、心や体の変化が著しい妊婦・産婦のデリケートな悩みにも精通できるでしょう。
5. 精神科
精神科看護師がおすすめの理由は、以下の3つです。
- コミュニケーションスキルの向上
- 身体的な負担が少ない
- 男性看護師が多い
コミュニケーションスキルを目指すなら、精神科看護師がおすすめでしょう。
精神看護師は心の病気を看護するスペシャリストです。そして心の状態を把握し、ケアしていくために必要不可欠なスキルこそ、コミュニケーションスキルなのです。気持ちの微妙な変化を観察し、適切な言葉かけや関わりをできる強みがあります。
また男性看護師の割合が多く、介助度の低い自立患者が多いという点もおすすめの理由です。力仕事は男性看護師に頼ったり、患者の介助度も低いため、一般病棟に比べて身体的負担を減らせます。そのため、腰や膝などを痛めるリスクも軽減できるでしょう。
【性格別】あなたに最適な診療科は「〇〇科」
自分に合った診療科を探す際、ご自身の性格を基準に考える方法もあります。性格に合わない配属先だと日々仕事が辛いと感じることも多く、看護師を続けていくモチベーションも下がってしまいます。
そこでこの章では、性格別に見たおすすめの診療科について以下6つを紹介します。
- 子供が好きな人は「小児科」
- 女性の強みを活かしたい人は「産科」
- 要領が良く、せっかちな人は「外科」
- おおらかな性格で長期的な関わりがしたい人は「内科」
- 人との関わりを大切にできる人は「精神科」
- 体力・精神力に自信がある人は「救命センター・ICU」
あなたに合った診療科を見つけるヒントにしていただけると幸いです。
1. 子供が好きなら「小児科」
子どもが好きな人は、小児科看護師に向いているでしょう。
大前提として、小児科看護師は子どもが好きでなければ務まりません。大人と比べて意思疎通が難しいシュチュエーションが多く、治療や処置の説明にも時間がかかります。時には年齢に合わせた言葉遣いや絵・図解を用いた説明も必要でしょう。
また療養生活中であっても、成長・発達を促せる関わりが求められます。例えば、私が勤務した小児科では、院内学級・保育制度がありました。病気の状態と相談しながら、年齢に合わせた方法で遊んだり、学習の補佐をしたりするなど行いました。
その他、患児の親の気持ちにも耳を傾けられる人は、小児科看護師に向いています。辛いのは患児だけではありません。親も同じように辛いと感じながら療養生活を送っているので、労いの声掛けができると良いでしょう。
以上より、子どもが好きであり、成長・発達を促せる関わりができる方は、小児科看護師に挑戦してみても良いでしょう。
2. 女性の強みを活かしたいなら「産科」
女性の強みを活かしたい方は、産科看護師が良いでしょう。
妊娠・出産に関する看護がメインの産科は、基本的に女性看護師だけが配属される診療科です。そして患者の抱える問題には、女性だからこそ理解できるデリケートな問題があります。
また出産という奇跡に立ち会える喜びは、産科看護師の特権です。出産に立ち会えたのをきっかけに助産師資格を取得する人も少なくありません。そのため、キャリアアップできるのも産科の強みになります。キャリアアップの方法については、厚生労働省のホームページが参考になります。
一方で死産や流産など悲しい結果になることもあります。産婦は自責の念を感じやすくナーバスになるため、そばに寄り添い精神的サポートのできる優しい性格の人に向いているでしょう。
参考サイト:厚生労働省|職業情報提供サイト(日本版O-NET)
3. 要領が良く、せっかちなら「外科」
要領が良く、せっかちな人は外科看護師に向いています。
外科病棟の看護業務は、手術・検査・処置・薬剤治療など多岐にわたります。そのため要領良く、テキパキこなさないといつまで経っても仕事が終わりません。結論ファーストで常に目的を決めて行動する力も鍛えられます。
急変や緊急入院など患者の状況は刻一刻と目まぐるしく変化するため、勤務中は気が休まりません。そのため、仕事とプライベートのON・OFFがしっかりとできる方は、外科に向いているでしょう。
4. おおらかな性格で患者と長期的な関わりがしたい人は「内科」
おおらかな性格で患者と長期的に関わりたい人は、内科看護師がおすすめです。
内科は、病気に対して薬剤で徐々に治療します。そのため、外科病棟よりも入院期間が長く、患者と長期的に関われるメリットがあります。そのため、看護計画についてじっくり考え、展開できます。
一方で傷口やドレーンのある外科とは違い、視覚的情報が少ない特徴があります。患者から分かるあらゆる情報を基に、病状を的確に把握するアセスメントスキルが求められます。
おおらかな性格で、患者と長期的に関わったり、アセスメントスキルを養ったりしたい方に向いているでしょう。
5. 人との関わりを大切にできるなら「精神科」
人との関わりやコミュニケーションを大切にできる人は、精神科看護師が向いています。
精神科看護師の強みは、コミュニケーションスキルを養えることです。他診療科が手術や薬剤で治療をするのに対して、精神科はコミュニケーションを通して心のケアを行います。
精神科に入院する患者は、客観的データだけでは評価できない心の病を抱えています。デリケートな心の持ち主が多いため、患者の気持ちに寄り添ったコミュニケーションが必要なのです。
また精神科で学べるコミュニケーションスキルは、すべての診療科で活かせます。実際、私と一緒に働いた精神科出身の看護師は、「患者の気持ちがわかる看護師」と定評があり、患者との関わりが長けていました。
このように、人との関わりを大切にでき、コミュニケーションに自信がある方は、精神科看護師が向いているでしょう。
6. 体力・精神力に自信があるなら「救命センター・ICU」
体力・精神力に自信がある人は救命センター・ICUに向いています。また医療・看護について幅広く学びたい人にも最適な部署でしょう。
緊急性の高い超重症患者が昼夜問わず搬送されてくるため、勤務中は緊張の連続です。入院する患者の多くが、人工呼吸器をはじめ医療機器類や点滴などに繋がれており、全介助にて処置・ケアを要します。もちろん入院患者の中には、亡くなる方もいます。
また入院対象は、すべての診療科の急性期患者であるため、病気や治療・検査などの幅広い知識やスキルに触れられます。処置も多く、積極的に参加すれば、他部署よりも短い期間で何倍もの経験ができるでしょう。
これら過酷な業務の救命センター・ICU看護師は、体力・精神力のある人でなければ務まりません。
体験談あり!看護師が診療科を選ぶ際の3つのポイント
看護師が診療科を選ぶなら、以下3つのポイントを踏まえて考えると良いでしょう。
- 性格に合っているか?
- 自己実現できる?
- ライフスタイルに合っているか?
就職や転職で診療科選びはその後の看護師人生を左右する大切な決断です。だからこそ、これらポイントを押さえて、自分に合った診療科が選べるようになりましょう。
1. 性格に合っているか?
診療科を選ぶ前に、ご自身の性格と各診療科との相性を考えてみると良いでしょう。
看護師はキツイ性格の人が多いイメージがありますが、実際は病院や診療科でそれぞれの色があます。そのためご自身の性格について正しく把握していれば、精神的ストレスが少ない診療科選びができます。
私が以前勤務していた病院は、県内最大規模の総合病院でした。病棟間の連携にも積極的であったため、様々な診療科の方と関わりました。これら経験を基に、診療科と性格の相性について以下例をあげます。
- 外科:結論ファーストで気が短い
- 内科:物事をじっくり考えられる
- 救命センター・ICU:向上心があり、常に新しいことに興味がある
- 小児科:子供や相手を楽しませることが好き
- 産科:喜びを分かち合える
- オペ室:記憶力が良く、細かい作業がストレスにならない
厚生労働省のデータによると、診療科は60種類以上もあります。きっとあなたに合った診療科があるので、まずはご自身の性格を分析することから始めましょう。
2. 自己実現できる?
自己実現とは「未来でどんな働き方をしていたいか?」「その姿を叶えられる診療科であるか?」を考え、行動することです。
日々忙しいと、自分の目指す看護師像や将来ビジョンを見失いがちです。特に新人の頃は、日々の業務をこなすのに必死であり、将来のことを考える余裕はありません。看護学生も同様に、勉強と実習、国家試験など次々とイベントがあります。私が新人・学生だった時も自己実現について考えたこともありませんでした。
しかし、あなたに合った診療科を見つけるなら、自己実現について考えなければいけません。自己実現を明確にしておくと、自分に合った診療科を見つけられます。就職・転職面接でも面接官へ診療科を希望する確固たる理由ができ、アピールもできるでしょう。
診療科を選ぶ際は、自己実現できるかどうかを基準に考えるのもポイントなのです。
3. ライフスタイルに合っているか?
ライフスタイルに合っているかを考えて診療科を選ぶとのもポイントです。
看護師としてだけでなく、一人の生活者としても働き方を考える必要があるからです。
特に女性看護師は、年齢によってライフスタイルが大きく変わります。独身でプライベートを充実させたい20代、結婚・出産・子育てで家庭を中心に考える30・40代など、ライフステージに合わせた働き方を選択していかなければいけません。
例えば、子育て中で家庭中心の働き方がしたいなら、残業の少ない精神科や夜勤がない外来を視野に診療科を探せます。少しでも多く稼いで趣味に当てたいなら、夜勤に加え危険手当ての出る手術室・救命センター・精神科などを選ぶのも良いでしょう。
このように生活者としてライフスタイルを考慮して診療科を選ぶ方法もあります。
就職・転職面接で希望の診療科に配属されるためのコツ
就職・転職面接で希望の診療科に配属されるためには、以下2つのコツを意識すると良いでしょう。
- 希望する根拠を伝える
- よくある質問は答えを準備しておく
面接で希望の診療科への熱意が伝われば、採用後に配属を検討してもらいやすくなりますので、ぜひ参考にしてください。
1. 希望する根拠を伝える
就職・転職面接では、希望の診療科とその根拠も一緒に伝えましょう。
根拠を伝えると面接官を納得させられるからです。
面接官が知りたいのは、希望する理由や根拠です。あなたを採用することで病院にどんな利益があるのか、どんな貢献をしてくれるのか、これらについて具体的なイメージができるように伝えると良いでしょう。
また、あなたの強みや経験談と踏まえて伝えると、面接官へ思いが伝わりやすくなります。強みや看護経験は、あなただけの財産であり、採用する最大のメリットになるのです。
希望の診療科であなたに働いてもらいたいと思ってもらえるように、希望する根拠をしっかりと伝えましょう。
2. よくある質問は答えを準備しておく
よくある質問に対しては、答えを準備しておくことも必要です。希望の診療科があっても、面接で上手く熱意が伝えられないと、採用されにくいからです。伝えたい内容を箇条書きでまとめておくと面接時のお守りにもなります。
また、ある程度回答を考えておくと、話の趣旨がズレたり、緊張して頭が真っ白になったりすることも回避できます。
よくある質問の例は、以下になります。
- 自己PR
- 志望動機・退職理由
- これまでの看護経験とその学び
- 採用後に実現したい姿
- 看護観
- 印象的なエピソード
希望の診療科に配属してもらうために、面接対策はできますので、ぜひご活用ください。
まとめ: 性格や目標と相談し、最適な診療科選びをしよう
以上、看護師におすすめの診療科について詳しく解説しました。要点を以下にまとめます。
- 性格と診療科の相性を考えると自分に合った診療科を見つけやすい
- 診療科を選ぶ際は「性格」「自己実現」「ライフスタイル」に着目する
- 面接では診療科を希望する根拠を伝え、あなたを病院が採用するメリットをイメージさせることが重要
就職や転職先のどの診療科へ配属されるかは、その後の看護師人生に大きな影響を与えます。自分に最適な診療科を見つけるために、自己分析をし、性格や強み、これまでの看護経験などを把握しましょう。
また、就職・転職面接では、その診療科を希望する理由や根拠を伝えましょう。よくある質問を参考に、自分なりに回答を準備しておくと、当日話の趣旨がズレたり、緊張して頭が真っ白になるのも回避できるでしょう。希望の診療科に対する熱意が伝われば、配属されやすくなります。
就職・転職前の診療科選びのヒントとして、この記事を参考にしていただければ幸いです。
この記事を書いた人
秋山 京洋
広島県立三次看護専門学校卒業。看護師免許取得。小児科や一般外科病棟を経験。現在は臨床で培った知識やスキルを活かしてライターとして活動中。執筆業以外にもKindle本の出版や絵本制作など精力的に活動の場を広げている。