正看護師と准看護師の違いとは?資格、働き方、給料とレベルアップの方法を徹底解説

正看護師と准看護師の違いとは?資格、働き方、給料とレベルアップの方法を徹底解説

2020年に進研ゼミ小学講座が昨年行った「小学生(女子)がなりたい職業」ランキング2020では8位だった仕事。2010年・2000年の調査でも5位以内だった仕事。親が子供につかせたい職業ランキングでは2000年・2010年・2020年ともに、1位を獲得している仕事。あこがれの職業を知っていますか?

実は、『看護師』なんです。

その人気の高さは、親子ともに時代を超えても変わらないものとなっています。

厚生労働省が2年に一回行っている、衛生行政報告例によると2018年(平成30年)末時点で約150万人の看護師が働いています。潜在看護師が71万人以上いるといわれており、看護師の資格を持つ人の数は220万人以上とも報道されています。

平成29年の日本の生産年齢人口(15~64歳の人の数)のうち女性の労働人口は2,609万人ですので、実に11人に1人は看護師の資格を持っていると言えるくらいの仕事です。

では、病院、クリニック…いろいろな場所で看護師が働いていますが、看護師の資格1つだけではないって、知っていましたか?

何のこと?って、思った方の方が圧倒的多数なはず。

見た目だけでは、見分けはつきませんが、看護師には『正看護師』と『准看護師』の2つの資格があるんです。

「看護師は看護師でしょ?違いなんてあるの?」

「名前だけが違うんでしょ?」

そんな疑問をもったあなたにもわかりやすく、「正看護師」と「准看護師」の違いについて解説していきます。

正看護師とは?

正看護師のイメージ

准看護師についてお話しする前に、正看護師について知っておく必要があります。正看護師は保健師助産師看護師法(以下、保助看法)に基づく国家資格です。公益社団法人日本看護協会では看護師の仕事を『傷病者や妊産婦の療養上の世話をしたり、診療の補助を行うこと。“人を看る”という看護師独自の視点で観察や判断をし、患者さんの生命を支えています』と表現しています。

正看護師になるには、「看護師国家試験」に合格する必要があります。

看護師国家試験を受けるためには、「受験資格」を得る必要があります。必要な受験資格は、文部科学大臣指定の大学などで3年以上在籍するか、厚生労働大臣が認める施設(大学、短大、専門学校など)で、指定された内容について3年以上の教育を受け卒業することが必須となっています。

看護師国家試験の受験資格を得るためには、大きく分けて3つの方法があります。

  1. 看護師養成所で3年以上勉強し国家試験に合格して看護師になるコース
  2. 4年制の看護大学に通って試験を受けるコース
  3. 准看護師になって働き指定の学校に通い国家試験受験資格を得て正看護師になるコース

 です。

高校生などが進路選択をする場合に、一般的に目指すのが1、2の「正看護師」になるコースです。

そのため、一般の人には3の准看護師という資格があることはあまり知られていません。

近年の少子化の中では、4年制の大学が増加し、3年制の看護短期大学は減少傾向にありますし、社会人経験のある人が看護系大学などに編入学し、看護師を目指すというケースも増えてきています。

4年制大学に比べると専門学校は学費も安く、看護師の知識と技術をいちばん短い3年という期間で習得することができるため、いまだに根強い人気を誇っている看護師養成学校です。

看護師になるめたの進路コース

正看護師がどういったお仕事をする職業なのかという定義やその職務内容は、第二次世界大戦直後の昭和23年に発令された保助看法に明記されています。以降、時代に合わせて要綱は追加されていますが、日本で看護師を行うためのベースとなる原理原則については、80年近く変わっていません。しかし、医療の高度化・細分化は目覚ましく、人々の暮らしもAI化・IOT化・自動化がすすんでいます。大学教育や養成所の3年という期間だけでは、学ぶことが多すぎて看護職の「基本のき」しか知ることができず、卒後教育に重点を置かれるようになってきているのです。

最近では大学卒業後に看護師としての専門性を高めるために、大学院に進学しその後看護師として就職する博士課程卒の看護師が増加しています。医療の高度化を支える、専門性の高い看護師の活躍が日本中で期待されています。

直近の2021年2月に行われた第110回看護師国家試験では、合格率は90.4%、5万6,868人の新たな看護師が誕生したと、厚生労働省は発表しています。

2021年の国家試験は新型コロナの影響もあり、実習時間が従来のように確保できず、学校内での実習のみに置き換わった学校も少なくありません。それでも、法律で定められた受験資格を満たし、例年と変わらない合格率を誇る看護学生さんと看護師養成機関の努力を高く評価したいですね。

准看護師とは?

では、准看護師とはいったいどのような職業なのでしょうか?

看護師の仕事について定義した、保助看法第6条で准看護師は「医師・歯科医師又は看護師の指示のもとで、傷病者若しくは褥婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行う」と定義され、教育内容・期間も正看護師とは異なったカリキュラムで教育を受けています。

正看護師と准看護師には、その資格認定の段階から大きな違いがあります。

正看護師は厚生労働大臣が認める国家資格ですが、准看護師は、都道府県知事が認める資格になります。

正看護師の場合免許には厚生労働大臣の名前が記載されますが、准看護師では都道府県知事の名前が記載されています。

都道府県知事が認めるからと言って、免許に記載されている都道府県でしか准看護師として働くことができないという縛りはありません。日本全国どこでも就業が可能なのは、正看護師と同じですね。

2019年の准看護師の試験では全国で1万6,233人の准看護師が誕生し、試験の合格率は96.2%でしたが、受験者・合格者数は5年間で約1,000人、約6%減少しています。

正看護師国家試験は2021年には5万6,868人の合格者数ですので、正看護師の1/3以下の人数しか准看護師の受験者・合格者がいないことがわかります。

准看護師は、2016年末現在で約34万人が就業しています。就業場所としては、約4割は病院勤務、約6割が診療所や訪問看護ステーション、社会福祉施設、介護保険施設等で勤務しているのが実状です。

大学病院等の高度・大規模な病院、都道府県立・市立病院などでは、准看護師の新規の求人を行っていない医療機関が大多数を占めるため、病院勤務の割合が少なくなっています。そういった病院では、准看護師という言葉は知っていても、准看護師の資格を持つ人を見たこともなく、一緒に働いたことがない正看護師も増えてきているのが実情です。

その反面、正看護師の就職率の低い診療所や訪問看護ステーション、社会福祉施設、介護保険施設等で働く准看護師の割合は高くなる傾向にあり、准看護師と正看護師が協力して看護に当たっています。

正看護師と准看護師の違いとは?

正看護師と准看護師の違いのイメージ

では、正看護師と准看護師は何が違うのでしょうか?一つずつ、解説していきます。

日本看護協会は『看護師に正看護師と准看護師があるのではなく、看護師と准看護師は別の資格である』と明言しています。

保助看法にも明記されている通り、看護師は自ら計画し実践しますが、准看護師は看護師の指示を受けて業務を行います。そのため看護師養成学校の教育は看護師と准看護師で根本的考え方が異なっているのです。

1. 教育方針の違い

まずは、看護師の専門教育を受ける学校の入学要件について触れたいと思います。

正看護師の学校に入学するためには「高校卒業資格」が必要ですが、准看護師の学校では「中学卒業資格」が必要となっています。准看護師の学校の入学試験は中卒レベルですので、この時点で基礎知識・学力には大きな差があると考えることができます。

次に、看護師教育は厚生労働省が策定した「看護師教育における指導ガイドライン」に準じて行われています。ガイドライン=こういう看護師・准看護師を養成したいという、国の方針をわかりやすくしたものです。正看護師と准看護師についてガイドラインを比較してみると、それぞれの資格に対する国の考え方が見えてきます。

まずは、看護師のガイドラインです。

  1. 人間を身体的・精神的・社会的に統合された存在として幅広く理解し、看護師としての人間関係を形成する能力を養う
  2. 看護師としての責務を自覚し、倫理に基づいた看護を実践する基礎的能力を養う
  3. 化学的根拠に基づき、看護を計画的に実践する基礎的能力を養う
  4. 健康の保持・増進、疾病の予防及び健康の回復にかかわる看護を、健康の状態やその変化に応じて実践する基礎的能力を養う
  5. 保健・医療・福祉システムにおける自らの役割及び他職種の役割を理解し、他職種と連携・協働する基礎的能力を養う
  6. 専門職業人として、最新知識・技術を自ら学び続ける基礎的能力を養う

では、同じガイドラインで准看護師についてはどのように、明記されているのでしょう。

  1. 医師・歯科医師、又は看護師の指示のもとに、療養上の世話や診療の補助を、対象者の安楽を配慮し安全に実施することができる能力を養う
  2. 疾病をもった人々と家族の様々な考え方や人権を尊重し、倫理に基づいた看護が実践できる基礎的能力を養う

と、なっています。

正看護師は人間を理解し、倫理的側面に配慮し、科学的根拠を持ち、状態に応じて的確に判断し主体的に看護を実践していくことが求められています。反面、准看護師は指示の元、患者の安全・安楽に配慮し、倫理的側面に配慮することが求められているのです。

看護の現場おいて、知識技術をもとに主体的に看護実践をおこなうのと、指示の元におこなうのでは大きな差がありますし、そのための知識も技術もことなります。

このように国の考え方1つとっても、正看護師と准看護師の教育の目指している方向性には大きな違いがあることがわかりますね。

2. 履修時間と実習時間、教育内容の違い

看護師になるための国の教育方針の違いはおわかりいただけましたか?

次に解説していくのは、正看護師と准看護師それぞれの、履修時間(看護について勉強する時間)と実習時間についてです。

以下は、履修時間と実習時間を比較した、日本看護協会の表になります。

准看護師は教育の総時間数を1,890時間としています。対して正看護師の看護師学校養成所では3,000時間以上を教育にかけることになっています。准看護師と正看護師の教育時間に1.5倍以上の差があるのは、准看護師では教育期間が2年、正看護師は最低3年と差があることが理由にあげられます。

また、看護学生が看護技術や知識に基づき看護計画を立案・実践し、患者さんのものとで看護を展開する「臨地実習」に費やす時間にも大きな差があります。

准看護師は735時間ですが、正看護師は1,035時間以上と定められています。臨地実習では実際の患者さんのもとで、患者さんとコミュニケーションをはかりながら、看護について考えていくものです。学生にとっては大変でつらい反面、学ぶことも多くなり看護師として大きく成長する機会にもなります。

正看護師の臨地実習では、さまざまな場所で1~4週間を実習を行っています。病院内では新生児から老人までさまざまな年齢と病気の患者さんを担当し、それ以外にも、精神病院や地域の保健所・保育園などで実習する機会があります。病院実習が基本となる准看護師よりも、実習で経験し学ぶことが格段に多くなっているのです。

さらには、看護師養成所の履修時間・実習時間はともに「以上」と明記されています。これは、最低履修期間である3年の教育課程を念頭に置いているからであり、近年増加している4年制大学ではさらに多くの教育・実習を受けた看護師が誕生しているのです。

学校に行く時間が短ければ、早く社会に出て看護師として働きはじめることが可能になります。しかし、学校で学べることは少なくなり、4年制大学卒業者と比べるとその差は実に2倍になってしまうのです。

同じ「人体の構造と機能」を学ぶ場合を例にあげると、正看護師と准看護師ではその内容には大きな違いがあります。

看護師の場合には「人体を系統立てて理解し、健康・疾病・障害に関する観察力、判断力をきょうかするため、解剖生理学、生化学、栄養学、薬理学、病理学、病態生理学、微生物学等を臨床で活用可能なものとして学ぶ内容とする。演習を強化する内容とする。」と、ガイドラインでは定めています。

准看護師の場合には、「人体の仕組みと働きや疾病の成り立ちの概要及び疾病の回復に必要な薬物や栄養等を理解し、的確な観察や安全な援助ができるための基礎的な内容とする」となっています。

同じ内容を学ぶとしても、看護師は系統立てて理解し、判断力を強化し、臨床で活用可能なものとして学習していきますが、准看護師の場合には概要を理解し基礎的な内容を学習していくことになります。看護・医療について一番最初に学ぶ基礎中の基礎である、人体の構造と機能の段階で、これだけの差があるのですから、1年・2年と経過していくうえでの知識の差は歴然としてくるでしょう。

准看護師のメリット

准看護師のメリット

では、准看護師の資格を取るには何かメリットはあるのでしょうか?

一般社団法人 日本准看護師連絡協議会ではこれから准看護師を目指す人に、いくつかのメリットをあげています。

1)中卒であれば、誰でも受験が可能

まずは、准看護師養成のための教育機関に入学しなくてはなりません。准看護師になる学校の入学に必要なのは「中学卒業資格」です。入学試験科目も中学卒業レベルが出題され、主に「国語・作文・数学・社会・理科・英語」などの中から2科目~3科目程度の出題が一般的です。

学校卒業後にブランクがあり基礎学力に不安があったり、中学卒業資格しかなくても、入学資格を得ることができるため人気があるのです。

2)資格取得までの期間が最短で費用も安い

准看護師の受験資格を得るために必要な、准看護師養成学校での履修期間は2年間です。正看護師よりも、資格を取る期間が短いため、資格取得までにかかる学費が必然駅に少なくなります。

最低限の費用で、最短期間で看護師の仕事に就きたいという人には最適の資格と言えます。

3)働きながら資格取得が可能

正看護師になるためには、全日制と呼ばれる朝から夕方まで授業を行う学校に行く必要があります。そのため、働きながら学費を稼ぐことは難しくなっています。

しかし、准看護師の学校では、平日の午後や夜間に授業を行う半日性という通学スタイルがあり、働きながら准看護師の資格を取得することが可能です。

学校によっては就職の病院と連携し、同じ学校の学生が複数就職し、カリキュラムに合わせて仕事と通学を両立できる環境が整っています。

仕事をしているのでお給料も入りますが、2年生になり実習で働く時間が短くなってしまうと、給料が激減してしまうため注意が必要です。

4)准看護師試験の合格率は高い!同年に複数回チャレンジすることが可能!!

准看護師の資格試験は、各都道府県を6ブロックに分けて実施されます。1年に1回しかチャンスがない看護師国家試験と異なり、6ブロックで時期をずらして試験が開催されますので、最大で6回、同じ年に准看護師の資格試験を受験することができます。

保助看法で出題の範囲は決まっていますが、出題の内容・難易度は各都道府県で異なっています。准看護師試験の合格率は全国平均97~98%となっており、看護師国家試験よりも約10%高くなっていますので、准看護師は合格しやすいと言われているのです。

資格の違い

正看護師と准看護師の違いとして繰り返しになりますが、その資格自体にも大きな違いがあります。正看護師は厚生労働大臣が認める国家資格ですが、准看護師は、都道府県知事が認める資格になります。

どちらの資格にも有効期限や更新はありませんし、日本全国どこでも働くことができます。看護師はキャリアアップとして、保健師・助産師・特定看護師・専門看護師・認定看護師・診療看護師になることができますが、准看護師は正看護師のみとなっています。

働き方の違い

一見すると、正看護師と准看護師の働き方は、同じように見えるかもしれません。

実際の准看護師の業務は、血圧・体温・脈拍などの測定、点滴、注射・採血、食事介助、排せつ介助、入浴介助、体位変換、手術の補助、夜勤、カルテの記載などとして一般的におこなわれている看護師と同じような業務です。

しかし保助看法では准看護師は「医師・歯科医師又は看護師の指示のもとで、傷病者若しくは褥婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行う」と定義されています。そのため、どの仕事においても、医師・歯科医師又は看護師の指示がなければ行えません。
看護師であれば患者さんの状態が変化した場合に、血圧・体温・脈拍などの測定だけでなく酸素飽和度の測定・血糖値の測定など、患者に侵襲が少なく状態を判断するために必要な医療処置を自らの判断で行うことができます。しかし、准看護師は酸素飽和度の測定・血糖値の測定を行ってよいか、医師・歯科医師・看護師の指示を仰いだ上でしか、行動することができません。自らの判断で業務をおこなうことは、保助看法に違反してしまうのです。

さらに、准看護師が看護師に指示を出したりすることはできません。繰り返しになりますが、准看護師は看護師の指示の元で働くと法律で決まっているからです。准看護師で看護部長・師長・婦長や主任などの役職経験者がいないのも、この保助看法の規定があるからなのです。

前述したように、准看護師の多く約6割が診療所や訪問看護ステーション、社会福祉施設、介護保険施設等で勤務しているのが実状です。

なぜ、准看護師は「病院ではない場所」でその多くが働いていているのでしょうか?

その大きな理由として、准看護師の有効求人数が、正看護師と比べて圧倒的に少ないことがあげられます。

以下は、日本看護協会の資料です。

これは平成26年の看護師・准看護師の有効求人数を表したものになります。

病院では看護師の有効求人数は約8万人ですが、准看護師は0.4万人で200倍の格差があります。次に、看護師が多く働く診療所とよばれる、入院患者19人以下もしくは、入院施設を有しない施設の看護師の有効求人数は1.8万人、准看護師は0.25万人となりその差は7.2倍です。

看護師の就職先として人気の小学校・中学校・高等学校の養護教諭では、准看護師の求人は0件でした。

このように働く場所は圧倒に看護師と比べて少なく、働き先の選択が難しいのが実情です。

さらには、医師・歯科医師・看護師の指示のもとで働くということが保助看法で定められているので、他に看護師がいて指示を受けたり、1人で判断し看護を行わなくてもよい、介護福祉関係に就職することが多くなっているのが実情なのです。

給料・年収の違い

ここまで、教育や働きかたの違いについて解説してきましたが、誰もが気になるのはいくら稼ぐことができるかということですよね?

一般的に看護師は同年代の女性と比べて高給取りというイメージがあるかもしれませんが、それは夜勤手当がついているからにほかなりません。

厚生労働省が発表したの令和元年賃金構造基本統計調査によると、正看護師の平均年収は482万9,100円でした。

これは、正看護職として働くすべての人の年収を平均したものであり、夜勤をしていなかったり非正規だったりする人もいますので、病院で夜勤をしている正看護師の年収から考えるとやや低い印象を持つかもしれません。さらにこの平均年収は手取り額ではなく、所得税や社会保険料などを控除する前の金額で、超過勤務手当・通勤手当・家族手当も加味した金額です。
額面での月収に換算すると約33.4万円×12か月+賞与など81.6万円となっています。

さらに人事院の平成30年職種別民間給与実態調査(職種別・年齢層別平均支給額)では、准看護師は看護師よりもどの年代でも給与が低く、月平均6~9万円前後の差があると発表されています。新卒の20代前半の正看護師の給料と、15年以上勤務した40前後の准看護師の給料にはほとんど差がないというのが、現実です。 さらに、賞与は基本給をもとに計算されますので、年間で30~40万円前後正看護師と准看護師では差が出ています。

もし、21歳から65歳まで勤務した場合の生涯賃金で換算すると、賞与を除いても約4,100万円の差が生まれます。賞与で毎年30万円の差があるとしたら、30万円×45年=1,350万円になります。賞与込みの生涯賃金で考えると、約5,500万円の差が生まれ、新築戸建てを購入できる金額になってしまうくらい、正看護師と准看護師では差があるんですね。

休み・待遇は同じ?

給料面では、正看護師と准看護師では大きな格差があることがわかりましたが、休み・待遇はどのようになっているのでしょう。
基本的には、就業規則や雇用の際に交わした契約に準じて休み・待遇は変わってきますが、一般的には「週休〇日」「週所定労働時間」が決められており、その規定が正看護師と准看護師で差があるという話はほとんど聞きません。

公休と呼ばれる年間を通した休みの日数や、夏季休暇は同じですし、有給休暇は採用された月によって初年度の付与日数が変わりますが、年間20日程度は付与されています。

妊娠出産に関する休暇は労働基準法で定められているため、女性労働者が母体保護のために取得する休暇ですので、准看護師だからその権利が認められないとうことは絶対にありません。

育児休業・育児短時間勤務制度を採用している場合にも取得は可能です。その他、介護休暇・慶弔休暇も正看護師と准看護師で取得できる日数に差はありません。

待遇に関しても、通勤手当や住宅手当、扶養手当なども資格による差はなく支給されています。

小さな病院やクリニックでは福利厚生等の待遇は、大きな病院と比べると充実してい奈かもしれませんが、それでも正看護師と准看護師で異なることはほとんどありません。

ただここでお話していることはあくまでも「一般的」な場合です。もう一度、ご自身と病院の契約がどのようになっているのか、就業規則上の規定はどうなのか確認することをおすすめします。実際の待遇等とあまりに差がありすぎる場合には、労働基準監督署に報告し是正が必要な場合もあります。

うちの病院・施設は大丈夫と思わず、確認してみてくださいね。

正看護師になるには

正看護師になるにはのイメージ

准看護師として働き、もっと看護を深めたい、主体的に看護を実践したいと思った時に次のステップアップする資格は「正看護師」です。

公益社団法人日本看護協会によると、准看護師が看護師資格を取得するには、看護師学校養成所2年課程(以下、2年課程)を修了し、看護師国家試験に合格する必要があると定義しています。

2年課程は、准看護師が看護師になるための課程で、高校卒業資格がある場合に進学することが可能となります。2年課程には、全日制、定時制(昼間・夜間)、通信制があり、通常正看護師の学校に行くよりもさまざまな方法で進学することができます。

しかし、中学校卒業後に最短期間の2年の教育課程を経て准看護師の資格を取得した場合には、実務経験を3年積まないと、2年過程の看護師養成所に入学する資格を得ることができません。実務経験年数は准看護師として勤務した年数で、就業場所や就業形態(常勤、非常勤、パート等)は問いません。勤務先での勤務証明書を看護師養成所の受験の際に求められることがありますので、働いていない期間がある場合には進学するまでの時間はさらに長くなってしまいますし、誤魔化すことは不可能です。

早く看護の仕事をはじめられるという点は魅力的ですが、正看護師として働けるようになるまで、中学卒業時点から考えると7年の時間が必要になってしまいます。この7年は高校+大学進学と同じ時間ですので、高校卒業後に3年過程の正看護師養成所に進学したほうが早く正看護師として働く事ができるという現実があります。

さらには、中学卒業後に2年の通信制を選択し准看護師になった場合には、正看護師養成所の受験資格を得るために、実務経験が7年間必要になります。この時点で、24歳。ここから2年間の正看護師養成所に通うため、実に11年かけて26歳で正看護師になる、大変遠回りなルートになってしまうのです。もしあなたが、正看護師になるという明確な目標があって、できるだけはやく看護の仕事をはじめたいという場合には、進路について・かかる時間と費用については、よくよく検討する必要があります。

他にもある関連医療職

ここまで正看護師と准看護師について、解説してきましたが、医療に関連したお仕事はほかにもたくさんあります。

国家資格の医療職だけでも「医師、歯科医師、薬剤師、看護師、助産師、管理栄養士、臨床検査技師、診療放射線技師、臨床工学技士、歯科衛生士、理学療法士、作業療法士、技師装具士、歯科技工士、救急救命士、言語聴覚士、視能訓練士…」など多数あります。

そのほかにも、はり・灸、医療事務・看護助手・歯科助手…福祉関連まで含めると、ここには書ききれないほどの医療・福祉関連の仕事があるのです。

その資格は医師のように受験資格を取得するまで実に6年を要する国家資格だけでなく、3ヶ月から半年の通信講座や独学で民間資格が取得できる医療事務までいろいろなものがあります。
その勉強の方法も資格を得ることでできる仕事の内容も、そして責任も異なっています。

あなたはなぜ医療職に興味を持ちましたか?

そのとき、あなたはどのように感じましたか?

医療職でどんなことをしたいと思いましたか?

その「きっかけ」となる出来事、「思い」や「夢」は一人ひとり違っているでしょう。

それを実現する医療職は、正看護師・准看護師ではないかもしれません。もう一度原点に立ち戻って、 考えてみると未来が見えてくるかもしれませんね。

まとめ

准看護師は一時期廃止案が出たこともありましたし、日本看護協会は正看護師との統合を目指しているという現実があります。看護師の世界でも高学歴化が進み、中学卒業後すぐに入学できる准看護師養成所の受験者数はこの10年で4割も減少しています。その結果、ここ20年くらいの間に学校が統廃合されたり、閉鎖になったりしているため、新しく准看護師になる人の数も減少傾向にあります。

しかし、「資格取得までの期間が短い」「学費が安い」「働きながら学校に通える」など、准看護師をめざすにはそれなりのメリットもあり、クリニックや介護施設を中心に、依然、准看護師のニーズは衰えていないのも実情です。

あなたがもし、短時間で費用をかけずに看護師になりたいのであれば、准看護師の資格を取得すことも悪くないかもしれません。しかし、業務面でも月収面・生涯賃金でも正看護師と准看護師には大きな差があります。

この記事を参考に、その点についてよく理解したうえで、あなたらしい人生設計で看護の仕事に携わってほしいと思います。

記事一覧へ戻る